「G-SHOCK」第3次ブームを起こせ…カシオ社長が語る注力ポイント
カシオ計算機が主力の耐衝撃腕時計「G―SHOCK(ジーショック)」で高価格帯モデルの拡販にかじを切る。時計市場はコロナ禍が痛手となったものの、足元ではスイスのブランドなどの高価格品が好調に推移する。カシオは販売単価の向上と高額製品の販路の開拓で市場の減速に対応し、時計事業の収益力回復を図る。4月1日付で就任した増田裕一社長は「オーセンティック(本物志向の製品)に力を入れる」と意気込む。(高島里沙)
時計業界では高価格品が好調に推移する一方、価格の安いカジュアル品の販売が落ち込む。スマートフォンとの連携機能などを備えるウエアラブル端末であるスマートウオッチの台頭が一因だ。カシオは樹脂製のカジュアルな腕時計に重点を置いてきたが、2018年以降、メタル製の高価格モデルを打ち出した。
G―SHOCKの最上位シリーズ「MR―G」では、40万―50万円台の製品を展開する。コロナ禍からの回復が期待される中国市場に加え、インドや東南アジアなどでの拡販で巻き返しを図る。
83年の初号機発売から40周年を迎えたG―SHOCKは、これまで2度のブームを巻き起こしながら、カシオの時計事業の成長をけん引してきた。第1次ブームは90年代。80年代は時計は時間を知るための道具だったが、ファッション的な要素としての自己表現アイテムに変わった。
こうした潮流が追い風となり、700億―800億円だったG―SHOCKをはじめとする時計事業の売上高は1500億円程度まで跳ね上がったが、97年をピークに落ち込む。80―00年代に心拍・血圧の計測や、全地球測位システム(GPS)といった多様な機能を搭載した製品を投入し、“デジタルのカシオ”との評価を得たが、現在のインターネットやスマホなどの環境はなく、時計単体での利用価値向上には限界があった。500億―700億円の売上高規模から脱却できない時期が続く。
そこで市場の9割を占めるアナログ時計への転換を選択する。03年に時計事業の統括部長に就いた増田社長は「機能開発のネタも尽き、どん底の一番苦しい時期だった」と振り返る。センサーを使うことで針をインジケーターのように動かし、動きの面白さを見せるなど、得意なエレクトロニクス技術でスイスの機械時計とは対照的な価値観を打ち出した。海外展開の拡大も相まって、10年代の第2次ブームにつながる。
直近ではコロナ禍の影響が否めないものの、メタルの高価格帯モデルに積極投資し、収益力回復につなげたい考えだ。増田社長は認知度向上のためには「既存市場に新たな軸をつくり、それを育てるために機能商品を手がける必要がある」と語る。G―SHOCKの第3次ブームを起こせるか、施策の実効性向上が問われる。