105億円調達…京大発核融合スタートアップが計画する使い道
加熱装置の開発加速
京都大学発核融合スタートアップの京都フュージョニアリング(KF、東京都千代田区、長尾昂最高経営責任者〈CEO〉)は17日、三菱商事や産業革新投資機構傘下のJICベンチャー・グロース・インベストメンツなど複数の投資家から105億円の資金調達を実施したと発表した。
主力製品である加熱装置やエンジニアの確保に使う。核融合発電は二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素エネルギーとして期待されており、研究開発を加速させる。
KFは調達した資金で核融合炉を加熱する「ジャイロトロン」の開発を強化する。ジャイロトロンは高出力のマイクロ波を核融合炉に向け発振させ、反応に必要なプラズマ状態を起こし、維持するために使う。複数の周波数帯を発振でき、長時間運転できるようにする。またプラントエンジニアなどの採用を進めて、3年後までに300人程度まで拡大する。
2024年中には自社の核融合模擬プラントを建設する計画。核融合反応は起こさず、模擬的に作った熱で発電し、部品の性能を検証する。
核融合発電をめぐり海外ではスタートアップが開発を牽引する。英トカマク・エナジーは22年3月に企業で初めて、核融合反応に必要なセ氏1億度のプラズマを実現した。他のスタートアップも30年代の商用化を目指している。KFも米国拠点を通じてスタートアップ向けの受注を狙う。
従来、核融合は国際プロジェクトの「イーター」を中心にした国際協力がメーンだったが、技術の優位性を競う国際競争の時代に突入している。政府はこうした状況を踏まえ、4月に核融合発電の実用化に向けた初の国家戦略を策定し、産業化や専門人材の育成を急ぐ方針を示している。
日刊工業新聞 2023年05月18日