九州工大が10億円投資、「未来思考実証センター」の中身
九州工業大学はロボットや通信技術などの社会実装を促進する「未来思考実証センター」(仮称)を新設する。戸畑キャンパス(北九州市戸畑区)内に建設し、2023―24年度に完成予定。総面積2475平方メートルで経費総額は約10億円、4階建てで主に事務オフィス機能を持たせる。通信実証の要となる6面電波暗室の整備も検討する。宇宙や海洋といった極限環境で活用できる技術について、迅速に社会実装するための実証運営・規制改革を管轄する。
同センターは1階にオープンオフィス、2階は実証試験や規制改革の支援オフィス、3・4階に連携機関の事務オフィスを設置。同大のアイデアの創出拠点「GYMLABO」とロボット技術を中心に技術実証や具現化を担う「イノベーションハブ」とともに、三つの施設を連動させてイノベーションの連続創出をねらう
九州工大はロボットや通信技術、人工知能(AI)の研究が盛んで、中でも産業用ロボットの技術開発を進めてきた。今後は工場内だけでなく、宇宙や海洋などの人が立ち入れない極限環境に適応したロボットや通信技術の開発にも注力する。
現在は情報通信研究機構やパナソニックと共同で、水中での無線通信技術を開発中。25年にも技術実証し、海中作業機械の遠隔操作やデータ通信、海中ドローンなどの開発につなげる技術として社会実装を目指す。宇宙分野では同大が運用する小型・超小型衛星の数が大学・学術機関で6年連続世界1位。人工衛星や宇宙通信などの技術は国を超えて注目されている。
これらの技術を社会実装するには産業界が実際に活用できる形にする必要がある。学術界と産業界の技術開発のギャップを埋め、社会実装を迅速化する役割も新設するセンターが担う。同事業では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙通信、情通機構が水中通信、長崎大学と海洋研究開発機構が水中ロボット、東京工業大学が産学連携の強化を担う。