「チャットGPT」海外は不安先行…生成AIは天使か悪魔か
「Chat(チャット)GPT」をはじめとした生成人工知能(AI)の台頭で、経営者の仕事も危うくなる―。AIは10-20年後に人間が従事する仕事の半分を不要にすると言われてきたが、チャットGPTの進化はその目算を大きく変える可能性がある。20世紀に夢見たSFの世界は当初想定のドキドキ・ワクワク感より、職を失う危機感を多くの人にもたらしそうだ。(編集委員・鈴木岳志)
「チャットGPTがあれば我々経営者もいらなくなるかな」。機械大手首脳は冗談めかしてそう語った。当然ながら、発言の背後には自分の仕事が代替されるはずがないとの強い自負心が隠されている。ただ、AIの潜在的な破壊力を前に、一流経営者特有の鋭い勘が働いているのは確かだ。
AIが企業の行く末を左右する経営判断を下すことは現時点で非現実的だろう。ただ、大企業が日常的に活用するコンサルティングファームと同じように、戦略立案などの一部をAIに頼る可能性は今後、十分にありそうだ。
精密機器大手首脳は社内の専門家から生成AIのレクチャーを週1回ペースで受けているという。「世の中の情報が多過ぎるので、技術を正しく理解しておかないと、会社がおかしくなってしまう」とAI革命の本質理解に努めている。
その上で「チャットGPTを日本語で使うとまだ粗さが目立つので、使えないとばかにする人が多い。ただ、英語だとかなりのレベルに達しているので、海外の利用状況を注視しておかないと、実態を見誤る」と注意を怠らない。
AI開発競争は激しさを増している。チャットGPTの高度化に懸念を示していた米国起業家のイーロン・マスク氏は4月にチャットGPTなどに対抗する独自のAIを自ら開発すると表明した。米マイクロソフトやグーグルを中心としたつばぜり合いはAIの技術的な破壊力を物語っている。
世界各国は、止まらないAIの技術進歩に対して期待より不安が先行している。先進7カ国(G7)は4月末に群馬県高崎市で開いたデジタル・技術相会合の閣僚宣言に「責任あるAIとAIガバナンスの推進」を盛り込み、AIガバナンスの相互運用性を促進するアクションプランに合意した。
19―21日に開催されるG7広島サミットでもAI活用・規制が主要議題の一つになる。規制と、倫理的で責任ある技術発展のさじ加減は難しい。