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NECトーキン、“MLCCじゃない”コンデンサーをタイで1億個生産へ

NECトーキン、“MLCCじゃない”コンデンサーをタイで1億個生産へ

コンデンサーと小山茂典社長

 NECトーキン(宮城県白石市)は、スマートフォン向けポリマータンタルコンデンサーを増産する。2018年度までに数十億円を投じタイ工場(チャチュンサオ県)の生産能力を現状比25%増の月産1億個に引き上げる。スマホの高機能化により小型、薄型で大容量という特性を持つ同社製部品の採用が広がっている。部品の安定供給体制を整え、需要に着実に応える。

 ポリマータンタルコンデンサーは電極に導電率が高いポリマーを使ったコンデンサーで電力を瞬時に供給する役割を担う。タイのバンコクから東に50キロメートルに位置するタイ工場内に生産ラインを導入し需要増に対応する。

 NECトーキンはスマホ向けとして「F/PSシリーズ」を展開。サイズが「3216」(縦3・2ミリ×横1・6ミリメートル)、定格電圧が4ボルト、静電容量が100マイクロファラットと小型・大容量であるほか厚みが0・9ミリメートルと薄いのが特徴。

 また、主流の積層セラミックコンデンサー(MLCC)と異なり部品が伸縮することで発生する「音鳴き」と呼ぶ振動音がない。こうした特性があることから、スマホ向けをはじめタブレット端末(携帯型情報端末)、ノートパソコン向けで需要が伸長。工場がフル稼働になっていることから増産を決めた。

 同社の15年3月期の売上高は536億円。11年のタイの洪水被害の影響でタンタルコンデンサーを含むキャパシター事業が低迷した時期があったが、現在は部品需要の拡大などにより全社の収益をけん引する事業の一つになっている。
2016年2月19日 電機・電子部品
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
NECトーキンは2013年に米ケメットと資本・業務提携を結び同社の傘下に入った。ケメットは産業機器向け、NECトーキンはスマホなど電子機器向けタンタルキャパシターに強みがあり、製品を相互販売するなどシナジーが生まれている。小山社長はこうした戦略的提携を成功させるなど業績をV字回復させた立役者で社員からの信頼が厚いという。創業以来、磁性材料の開発で業界をけん引してきた1社で、スマホやタブレット端末などに使われているノイズを吸収する磁性シート「バスタレイド」は世界シェア首位。 (日刊工業新聞社編集局第一産業部・下氏香菜子)

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