「自動車」9連休・「パワー半導体」フル稼働…“GW工場カレンダー”をリポートする
ゴールデンウイーク(GW)が今週末から始まる。政府は5月8日、新型コロナウイルスの感染症上の位置付けを季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針。経済活動の正常化が進む中、メーカー各社の工場の稼働計画はアフターコロナに向けた業況感を映し出す。注目業界の“GW工場カレンダー”をリポートする。
自動車/9連休、稼働率は向上
自動車業界は、トヨタ自動車など主要な完成車メーカーが4月29日から5月7日までの9日間、工場を休業する。休業期間は例年と変わらないが、半導体不足やコロナ禍による中国・上海の都市封鎖(ロックダウン)があった22年と比べ、最近の各社の工場稼働率は高水準だ。
トヨタは22年5月に国内の半分以上の工場で稼働を停止したが、23年5月は納期改善のため国内に生産を重点的に振り向けていることや、半導体調達の改善による在庫状況の緩和などもあり、コロナ禍前に匹敵する稼働率を計画する。日産自動車の生産も改善しており、「22年10月から23年3月までは計画通りの稼働で、足元も前年を上回っている」(同社)。ホンダはコロナ禍前の水準には届かないものの、2―3月は計画通りの生産ができており、計画への遅れがみられた22年より改善している。
いすゞ自動車など国内商用車3社も同じ期間に工場を休業する。国内商用車は、3月の普通トラックの販売台数が前年同月比5・1%増の7521台で、17カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じた。「部品不足やサプライチェーン(供給網)混乱の問題はかなり解消した」(関係者)という。
重工・建機/受注好調も“しっかり休む“
重工業大手5社は全社が本社・工場ともに5月1、2日を休日にし、4月29日から5月7日までの9連休にする。日本産業機械工業会(産機工)は23年度の産業機械受注額が22年度見込み比3・5%増の5兆4149億円になると見通す。15年度以来の高い水準となる。受注は好調だが、大型連休はしっかり休むのが機械業界の慣例だ。
三菱重工業は飛び石連休が発生しないようにしている。社員がまとまって休むことでリフレッシュを図る。川崎重工業も同様の判断で9連休。三井E&Sも同じ9連休。IHIは工場を2日間だけ操業しても非効率との理由を挙げる。住友重機械工業は1、2日に稼働しないことで、工場の電力料金を減らす効果を見込む。
建設機械大手も大型連休となる。コマツは9連休。日立建機は本社、主力の土浦工場(茨城県土浦市)ともに、28日から7日まで10連休にする。
建機業界の需要は好調で出荷金額は2月(前年同月比約2割増)で28カ月連続でプラスとなった。
半導体/パワー分野、フル稼働続く
半導体では、パワー半導体などでは強い需要を受けフル稼働の状態が続くものの、半導体メモリーなどでは引き続き生産調整が継続する場面も増えた。
キオクシアは、四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)を例年通り稼働する。ただ「22年10月から始めている需要動向に合わせた生産調整は継続」(同社)とする。
ソニーグループは、子会社ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(熊本県菊陽町)の熊本県や山形県の各工場でイメージセンサーなどの受注が引き続き好調なため、例年通りフル稼働する。
三菱電機は、パワー半導体を生産する福岡市西区や熊本県合志市などの各製作所で、「需要増の対応」(同社)として一部ラインを除き原則稼働する。また、最先端半導体デバイスの研究開発・生産などを担う高周波光デバイス製作所(兵庫県伊丹市)も工期遅れの挽回のため、一部ラインを除き稼働する。
ルネサスエレクトロニクスは稼働率の調整を続けつつ、那珂工場(茨城県ひたちなか市)など国内の前工程4拠点はすべて稼働する。一方、後工程では大分工場(大分県中津市)は5月1―3日をメンテナンスのため停止。米沢工場(山形県米沢市)も同じ期間に法令点検で停止する。
東芝デバイス&ストレージ(川崎市幸区)はパワー半導体などを製造する加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)を24時間フル稼働する。一方、姫路半導体工場(兵庫県太子町)は装置メンテナンスのため、10日間休業する。アナログ半導体などを製造するジャパンセミコンダクター岩手事業所(岩手県北上市)が動力メンテナンスのため、1日休業。同大分事業所(大分市)はフル稼働する。