旭化成が50年続く「電解槽事業」革新、新サービスとは?
旭化成は2024年度をめどに新たなデータ駆動型サービスを立ち上げ、約50年続く食塩電解設備のビジネスを革新する。顧客に導入した設備の状態監視と基幹部品(セル)の修理・交換時期の最適化、修理中の代替セルの短期間レンタルを一貫して行う。顧客は生産安定化や電気代節約、コスト削減を図れる。
新サービスの核は、「サーキュラーフレーム(CF)」と名付けた短期レンタル用のセルだ。電解設備(電解槽)は食塩を電気分解して塩素とカセイソーダを生産する設備で、150―200個のセルで構成する。従来、セルの修理・交換は稼働後の経過時間に応じて行い、顧客は自前で予備のセルを保有していた。新サービスは、旭化成が持つ代替セルをレンタルし、顧客はコストを削減できる。
また、修理・交換時期を最適化することで、劣化の遅いセルの使用期間の延長や、劣化の早いセルを適切に交換して生産効率を維持する。劣化したセルは電圧が上がって電気使用量が増えるが、新サービスはこの上昇も抑えられる。
旭化成は、このサービスを「サーキュラーフレームアズアサービス(CFaaS)」として訴求する。海外の顧客との間で合意し、23年度前半から実証実験を始める。また、事業の立ち上げに向け、今後1―2年で欧州や米国、インド、中国でCFの保管や修理を行う仕組みを構築する。CFレンタルのみのプランも用意する。
CFにはデータ分析結果をもとに中古セルの再利用を検討する。電解セルに使われるニッケルやチタンはリチウムイオン電池(LiB)や航空機向けに需要増加が見込まれる。このため、将来は食塩電解業界内で資源を循環させ、確保する必要がある。
旭化成は電解槽で約37%の世界シェアを持つ。業界内の資源循環の議論にも影響を与えそうだ。
【関連記事】 ノーベル賞・吉野氏を生んだ旭化成の開発魂
日刊工業新聞 2023年04月24日