ニュースイッチ

“攻め”のDX不十分…IPAが指摘した日本企業の問題点

攻めのデジタル変革(DX)は不十分―。情報処理推進機構(IPA)がまとめた「DX白書2023」では、アナログ業務のデジタル化は進んできているものの、顧客価値創出やビジネスモデルの転換といった変革の成果は十分でないと指摘された。データ活用の施策一つとっても、日本企業の多くは業務効率化を主眼としており、成果評価の機会も設けられていない。DXの目標設定や評価など、根本的な見直しが求められる。(狐塚真子)

「デジタル化は危機意識とともにその推進が進みつつある。トランスフォーメーションは残念ながら、まだまだその意味からして理解されていない」―。DX白書有識者委員会の羽生田栄一委員長(豆蔵取締役)は、日本のDXの実態をこう分析する。日本でDXに取り組む企業の割合は、2021年度調査の55・8%から今回は69・3%に拡大し、米国の77・9%に近づいた。一方で注目すべきなのは、その中身だ。

「アナログ・物理データのデジタル化」など、デジタイゼーションの取り組みでは約80%の企業が成果を感じている一方、「新規製品・サービスの創出」「ビジネスモデルの根本的な変革」で成果を上げている企業はいずれも20%程度。米国の約70%と大きく差が開いている。日本企業におけるデジタル技術の活用の方向性は、新規事業創出などの“攻め”の分野ではなく、いまだに業務効率化をはじめとする“守り”が中心だ。

取り組み体制にも違いが見られる。顧客への価値提供という観点で成果評価の頻度を見ると、日本企業における「評価対象外」との回答は3―7割で推移する。

またデータ活用の分野に絞って回答結果を見ると、「全社で利活用している」「事業部門・部署ごとに利活用している」割合の合計は米国よりも多いものの、取り組み内容は「業務効率化」が中心で「新規事業創出」などの割合が少ない。データ利活用による売上増加の効果を実感している割合では、そもそも「成果を測定していない」企業が総じて5割前後。適切な成果評価制度の設定や、見直しの機会が求められる。

こうした実態から、IT業界では単にデータ分析ツールの提供だけではなく、データ分析に基づく施策の展開、評価まで、データ活用の取り組みをユーザー企業の社内で完結できるようなサービスの提供に踏み切る事業者も増えている。

SCSKはシステム提供のほか、施策の効果測定や分析、人材の育成・内製化支援までを網羅したデータ活用サービスを提供。またブレインパッドでは、データドリブン(駆動型)経営に係る組織力・データガバナンスに関する成熟度の評価、戦略策定などを通じ、企業のデータ活用・分析の内製化を支援するサービスを展開する。企業はDXによる競争力向上に向けて、IT事業者のノウハウを活用することも一つの手段となりそうだ。

日刊工業新聞 2023年04月24日

編集部のおすすめ