EV事業収益化に挑む、トヨタが掲げる一丁目一番地
トヨタ自動車の成長戦略が新たなステージに入った。1日に就任した佐藤恒治社長の経営テーマは「継承と進化」。走る楽しさといった既存の魅力を維持しながら、社会インフラとして付加価値を生むのが自動車の目指すべき姿だと位置付ける。新興勢も巻き込んだ次世代市場で勝ち残るには、事業構造転換にとどまらず、モノづくりなど長年の強みを守りつつ、企業風土の見直しまで踏み込む必要がある。
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脱炭素化や経済ブロック化が進む経済環境で、トヨタが掲げる1丁目1番地が、地域のエネルギー事情や需要に応じたパワートレーン(駆動装置)を提供する「マルチパスウェイ」だ。多様性の維持は正解のない時代における一つの解だが、投資がかさむことも事実。実現するための原資を生み出し続けられるかが、新経営陣の最大の課題になる。
特に電気自動車(EV)やソフトウエア投資は今後、さらに膨らむ。年間新車販売1000万台規模という強大な基盤をテコに、すでに1台当たりの原価をガソリン車の6分の1まで下げたハイブリッド車(HV)の新興国での販売拡大、ソフトサービスなどバリューチェーンでの収益拡大、得意の原価低減による利益創出を確実に実行する必要がある。
EV事業の収益化も大きなテーマ。コスト全体の3割を占め、資源獲得競争も予測される車載電池が重要パーツなだけに、生産技術革新によるコスト低減がカギだ。近年は「トヨタのモノづくり力が落ちているのでは」との声が聞かれる。伝統に裏打ちされた生産技術の伝承も重要になる。こうした投資や生産性改善効果を業績などの形で示せれば、進化したトヨタの姿が見えてきそうだ。
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日刊工業新聞 2023年04月24日