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トヨタ向け主力の金型メーカー、金属3DプリンターでEV用売り上げ拡大狙う

トヨタ向け主力の金型メーカー、金属3DプリンターでEV用売り上げ拡大狙う

名古屋特殊鋼が初めて導入した、米デスクトップ・メタルの金属3Dプリンター

名古屋特殊鋼(愛知県犬山市、鷲野敦司社長)は、電気自動車(EV)市場向け部品事業に本格参入する。このほど金属3Dプリンターを初導入し、EVや電池関連の製造設備といった電動化分野の受注に乗り出した。造形技術の向上などを狙い、装置を扱う丸紅情報システムズとも協業する。複雑形状の少量多品種生産に対応できるようにし、まずはEV・電池関連領域の売上高比率を2割にすることを目指す。

装置や工場内の専用建屋なども含めて、総投資額は約1億5000万円。今回導入したのは、米デスクトップ・メタルの金属3Dプリンターで、金属粉を接着剤で固めて積層造形するバインダージェット方式を採用している。高強度ステンレスやニッケル合金など複数の金属を造形できる点や、レーザー造形に比べて最大10倍の造形スピードなどが特徴。純正品以外の素材にも対応できる。造形エリアは最大で縦350ミリ×横220ミリ×高さ150ミリメートル。国内で同社の装置を導入するのは、名古屋特殊鋼が初めてだという。すでに試験運用を始めており、10月以降、金型など既存事業で使う素材の利用を始める計画。量産部品のほか金型も視野に、受注状況に応じて順次実用化する。

金属3Dプリンターを活用すれば、微細かつ複雑形状の部品も作製できる(造形物の一例)

丸紅情報システムズとは、材料となる金属粉末や造形データなどについて情報共有し、造形スピードの向上や扱える材料種の拡大、これらの成果を生かした装置の拡販につなげる。

名古屋特殊鋼はトヨタ自動車やトヨタグループ向けを中心に、内燃機関向けの金型を主力とする。一方、トヨタは2026年までに年150万台のEV販売目標や、車載電池に積極投資する計画を打ち出すなど、電動化は急速に進んでいる。名古屋特殊鋼はこれまでの切削加工に加え、複雑形状が求められるEV関連製品向けに3D造形を活用し、加工領域や電動化関連部品の売り上げ拡大を図る。10年後には売上高の1割程度を、金属3Dプリンター製にしたい考えだ。


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日刊工業新聞 2023年04月12日

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