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デンソーが8年ぶり交代、新社長は「調和力」の人

デンソーが8年ぶり交代、新社長は「調和力」の人

握手を交わすデンソーの有馬社長(左)と林次期社長

デンソーは、林新之助経営役員(59)が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する人事を発表した。有馬浩二社長(65)は代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就く。社長交代は8年ぶり。林氏は入社以来、一貫してエレクトロニクスやソフトウエア分野に携わってきた。トップ交代で電気自動車(EV)への対応や、ソフトで機能を更新するクルマづくりへの事業構造転換といった重要テーマを加速させる。

6月に開催予定の株主総会後の取締役会で正式に決定する。有馬氏は後任の条件として「デンソーの新たな価値創造をリードできるかを重視した」と説明。林氏を「エレクトロニクスやソフトの分野に精通しているだけでなく、非常に明るく、人の話を聞き共感を生み出せる人物だ」と評した。CEOの兼務については「経営と執行は任せる。業界を超えたネットワーク構築などが私の役割だ」と述べた。

林氏は「内燃機関から電動化へ、ハードからソフトへの構造転換と、自動車以外の価値を創造すること」を課題に挙げた。その上で「新たな価値を創造し続け、変化の時代を力強く生き抜く会社に進化させるのが私の使命だ」と力を込めた。

トヨタ自動車がEVやソフト領域の強化を視野に佐藤恒治社長(53)への若返りを果たし、愛知製鋼では磁石やモーター領域を統括する後藤尚英経営役員(57)が新社長就任を予定するなど、トヨタグループでは次世代を見据えたトップ交代が相次いでいる。

【略歴】林新之助氏 86年(昭61)早大理工卒、同年日本電装(現デンソー)入社。15年常務役員、21年経営役員。三重県出身。

素顔/デンソー社長に就任する林新之助(はやし・しんのすけ)氏/誰にでも気さくで穏やか

次期社長への打診を受けたのは3月頭。「何を言われたのか認識できなかった」ほどの驚きだったが「仕事を通じて自身がやりたいことと合っている」と感じ、その日の夜には承諾した。

誰にでもフランクに接し、穏やかな人柄が印象的。デンソーが世界で初めて量産化した、ディーゼルエンジンの電子制御式燃料噴射システムではECU(電子制御ユニット)開発を担当し「幅広い領域の技術者だけでなく品質など、さまざまな部門を巻き込んで量産の夢を実現した」と、調和力を発揮。近年では部門横断的なソフト統括組織の仕組みづくりなど、事業構造変革をリードしてきた。

「話しやすくオープンに議論できる風土を作り、近寄りやすい社長としてコミュニケーションを円滑にしたい」と意気込む。休日は「自分を見つめ直す時間が大事」と、読書やウオーキングでリフレッシュする。(名古屋・政年佐貴恵)


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日刊工業新聞 2023年月4月11日

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