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ロボ調査の想定は二転三転…福島第一原発1号機、燃料デブリ取り出しへの現在地

ロボ調査の想定は二転三転…福島第一原発1号機、燃料デブリ取り出しへの現在地

1月と2月のロボ調査で堆積物を吸引回収した(東電提供)

東京電力福島第一原子力発電所1号機のロボット調査で、格納容器内に広がる堆積物全体が燃料デブリ(溶け落ちた核燃料由来物質)である可能性が浮上した。調査前は圧力容器下などの領域にのみ燃料デブリが存在すると考えられてきた。2月の調査で堆積物全体ではなく、堆積物表面に広くデブリ由来物質が存在すると想定を修正し直した。2022年2月から続くロボット調査は想定を二転三転させている。廃炉に向けて重要な情報を集めている。(小寺貴之)

「(燃料デブリが)広がっているとしたら取り出し工法を工夫しないといけない」と、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は説明する。1号機では格納容器内に水中ロボ(ROV)を投入して調査を重ねている。圧力容器を支える構造物(ペデスタル)の周囲は20センチ―1メートルほどの堆積物に覆われており床は見えない。ペデスタル開口部から流れ出たため、開口部付近の堆積物は厚く、離れるほど薄くなっている。この堆積物の下に燃料デブリがあり、それは開口部周辺の限定領域にのみ存在すると考えられてきた。だが22年5―6月の調査で堆積物が厚いと熱中性子束も大きくなる傾向があった。ここで堆積物全体が燃料デブリである可能性が浮上した。

同12月にデブリ検知器を積んだ機体を投入すると、8カ所中7カ所で同程度の熱中性子束と燃料由来のユーロピウム(Eu)154が広く検出された。堆積物の厚みに関わらず熱中性子束は大きい。Eu154は拡散性が低く、燃料帯同性が高い。堆積物表面に燃料デブリ由来物質が広く分布すると想定する。

そして、堆積物全体が燃料デブリである可能性も否定できていない。この場合、堆積物の下に水が滞留するなど中空構造になっていると考えられる。超音波調査からは堆積物内部に空洞やがれきの隙間があることが分かっている。

いずれにせよ、堆積物の下に想定されていた燃料デブリは、燃料デブリ由来物質として堆積物表面に存在し、格納容器内に広く存在すると想定される。

こうした堆積物は格納容器を囲む圧力抑制室へと流れ込む様子が確認されている。燃料デブリが流出していると、取り出し工法は格納容器内での作業だけでは済まなくなる。

堆積物自体は1月と2月のロボ調査で吸引回収することに成功した。調査終了後に構外へ搬出し、約1年かけて分析する。小野代表は「1号機の取り出しは少し先だが、重要な知見が得られている」と説明する。調査が進み、想定が覆ることは前進といえる。確実なデブリ取り出しに一歩ずつ近づいている。

日刊工業新聞 2023年03月08日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
見てみないとわからないことはいっぱいあって、見てみると調べないといけないことが山ほど出てくる。10年前に10年後もこんな状況だとは思ってもいませんでした。それでも一歩一歩知見を集めています。一歩一歩が重要な一歩です。データが公開される度に、これから立ち向かう困難さにため息が出ます。そして10年後はデブリの取り出し作業が順調に進んでいるでしょうか。自分には予想がつきません。歩みを止めてはいけないことだけはわかります。

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