ホンダと新会社…リチウムイオン電池に舵を切るGSユアサの危機感
自動車用鉛蓄電池で高いシェアを握るGSユアサが、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池(LiB)に大きくかじを切る。4月に始動した3カ年の新中期経営計画で、600億―700億円規模の設備投資をEV用LiBに充てる。2022年にEV用LiB開発の専門部署を新設し、23年内にはホンダと同電池の研究開発を担う共同出資会社の設立を予定。着々と準備を進めてきた。EV市場のさらなる拡大を見据えて、事業構造の変革を目指す。(京都・新庄悠)
「ガソリン車の始動用鉛電池についてはかなり厳しい見方をしている。現段階でこの分野への集中投資は考えていない」。村尾修社長は6日の新中計説明会でこう語った。東南アジアや中東、アフリカなどでは底堅い需要があるものの、中国市場では競争が激化し、採算性、利益率が非常に低いという。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や車の電動化が加速し、GSユアサが主力としてきた自動車用の始動用鉛蓄電池の需要減は避けられない。
新たに策定した中計では、車載用LiB事業を業績のけん引役とし、25年度(26年3月期)に22年度見通し比59・4%増の売上高1100億円と高成長を見込む。連結売上高は同17・3%増となる6100億円以上、営業利益は同41・4%増の410億円以上を掲げた。35年度には売上高8000億円を見据え、この3カ年はそこに向けた土台作りと位置付ける。
足元の3カ年で車載用Li
B事業の成長に寄与するのは、あくまでハイブリッド車(HV)用やプラグインハイブリッド車(PHV)用だ。HV用LiBは日系自動車メーカーを中心に30年代半ばまでは需要が増加する見通しで、順次能力増強してきた。ホンダと共同出資するブルーエナジー(京都府福知山市)の第2工場は22年4月に稼働。22年度下期から生産能力を年5000万セルとし、25年度には同7000万セルまで拡大させる。ただ中・長期的にはEV用LiBが大きく伸び、35年度までの成長をけん引する。新中計では3年間で設備投資1900億円、研究開発費600億円を投じるが、EV用LiB向けが大きな柱。ホンダと共同で年内に設立する研究会社で高容量・高出力な電池の研究開発を進めるが、その技術を用いた電池工場への投資額も新中計に織り込んだ。
EV向け電池はホンダ以外への供給も検討。35年度には国内向けで年20ギガワット時超(ギガは10億)の生産能力を目指す。「売り上げや利益に本格的に貢献するのは26年以降」(村尾社長)としながら、この3年で飛躍への足がかりを一気に築く構えだ。
【関連記事】 EV向けで生きる!「世界初」水ベースの感温性磁性流体がスゴい!