最大6割消費エネルギー削減、東工大が低温でアンモニア合成に成功した意義
東京工業大学の服部真史特任助教と原亨和教授らは、安価な鉄触媒と200度C以下の低温でアンモニアを合成することに成功した。200度Cではアンモニア収率が約7割に上がり、4―6割ほど消費エネルギーを削減できる。燃料アンモニアや肥料原料などコストの厳しい分野に提案していく。
赤錆の主成分の三酸化二鉄を触媒として利用する。三酸化二鉄の粉末にバリウムを溶かした水溶液を混ぜて還元し、水素化バリウムの微粒子が鉄の表面に付着した触媒を作製した。水素化バリウムが鉄に電子を供給して助触媒として働く。
窒素分子や水素分子が鉄触媒表面で原子に別れ、窒素と水素が結合しアンモニアとなって放出される。10気圧100度Cで触媒1グラム、1時間当たり0・1ミリモル。180度Cでは同0・4ミリモルの速度で合成できた。既存の鉄触媒は200度C以下では反応しない。
反応温度を下げると化学平衡がアンモニア生成に有利になる。200度Cではアンモニアの液化に必要な10気圧で収率が7割に上がる。100度Cでは93%に達する。
従来の鉄触媒は450度Cの高温が必要で50気圧以上に加圧していた。新触媒で消費エネルギーは半減する。これまでアンモニア合成触媒に白金族のルテニウムやレアメタルを用いる研究がされてきた。鉄触媒はこれらに比べ安価。エンジニアリング会社と連携し、実用化を目指す。
日刊工業新聞 2023年4月3日