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マイクロナノバブルで“漁工”連携、カニの鮮度保つ

兵庫・広島の中小と漁協、研究機関などが実証。春にはホタルイカでも
マイクロナノバブルで“漁工”連携、カニの鮮度保つ

試作した装置でカニの鮮度維持の実証実験をするメンバー

 兵庫と広島の中小企業2社と漁業組合や研究機関が共同で、マイクロナノバブル技術で水産物の鮮度維持を図る漁工連携プロジェクトが兵庫県内で始まった。松葉ガニやホタルイカの漁獲量が全国トップ級の浜坂漁港(兵庫県新温泉町)で、独自装置を使い水ガニ(若い松葉ガニ)の鮮度維持を実証する実験を3月まで行う。2月中旬時点で一定効果が出ており、春にはホタルイカでも実証を行う。6月めどに装置の実用化を目指す。

 プロジェクトは公益財団法人の新産業創造研究機構(NIRO、神戸市中央区)がコーディネートした。水産物と実験場を浜坂漁業協同組合が提供し、永光産業(兵庫県加古川市)が西山ポンプサービス(広島市南区)の技術協力を得て、鮮度維持装置を試作した。

 試作装置は、マイクロナノバブル発生部や排せつ物のスカム処理部などを組み合わせ小型化した。装置を蓄養水槽にセットし、まず粒子径50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の泡を作りポンプを経由し、同1マイクロメートル以下のナノバブルにして活魚のいる水槽に出す仕組み。特許も共同出願した。永光産業は100万円を切る価格での製品化を狙う。

 実験では漁で捕ったカニを円形水槽で10匹、角形水槽で20匹入れ、マイクロナノバブルの水槽と従来のエアレーション(溶存酸素維持)水槽とで比較。両水槽とも1匹も死なない生存期間はマイクロナノバブルが7日間で、エアレーションは4日間だった。

 NIROは「マイクロナノバブルの技術を水産物の鮮度維持に役立てられる結果が出つつある。効果メカニズムも検証したい」(佐野正技術移転部門長)とする。浜坂漁港では「魚価の向上につながる。装置を漁船に積むことも検討したい」(川越一男組合長)としている。
日刊工業新聞2016年2月18日地域経済面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
微細な気泡であるファインバブルは昨年から産学に加え自治体も参加した連係が増えている。「1次産業×2次産業」でいえば漁工よりも農工が先行しているかも。経産省は発生機器や計測装置などをを含めた微細気泡の世界市場が2030年には12兆円以上と試算する。ナノレベルの細かい泡を発生させる装置を作る技術は日本以外にないと言われているが。

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