「ユニクロ」展開のファストリは最大4割増、流通・小売りで相次ぐ賃上げの中身
流通や小売り業界などで賃上げとともに、新卒の初任給を引き上げる動きが加速している。物価上昇などを背景に賃上げ機運が高まる中、春闘の労使交渉を前に初任給を先行して引き上げる例もある。新卒の就職市場は空前の「売り手市場」が続いており、「買い手」の企業にとっては、人材確保の競争力強化の狙いもある。
ローソンは4月入社の大卒の新入社員の初任給を前年比6000円引き上げ、21万7000円となる。大学院卒は据え置く。ローソンの大卒の初任給の引き上げは2020年4月以来、3年ぶりとなる。竹増貞信社長は「社員のモチベーションを上げてよりよい商品やサービスを生み出し、消費の喚起につなげていきたい」と話す。
コンビニエンスストア業界では最大手のセブン&アイホールディングスが22年に大卒で前年比3000円引き上げ、22万円としている。23年については現在検討を進めており、4月に確定する。また、業界2位のファミリーマートは前年比7000円引き上げ、22万円で労使交渉を進めている。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、3月から最大40%の賃上げを実施する。これに伴い、新入社員の初任給を現在25万5000円から30万円に引き上げた。海外で多くの店舗を展開する中、賃金水準を同等にする。また、家電量販のノジマは22年4月に5000円引き上げ、さらに4月に1万円引き上げ、大卒で25万5000円、大学院卒で26万8000円としている。
3月から本格的にスタートしている就活市場では、24年4月入社の初任給を引き上げる動きも出始めている。不動産や商業施設の運営などを手がける西武リアルティソリューションズ(東京都豊島区)は、24年度の新卒の初任給を2万3000円引き上げる。初任給は大学卒で11%増の23万2000円、大学院卒で10・6%増の24万1000円となる。保有資産が拡大する中、いち早く新卒の初任給を引き上げることで、採用の競争力を高める。斉藤朝秀社長は「柔軟な発想で企画、構想できる人材の確保につなげたい」と話す。
酒類業界では23年の労使交渉の結果を受け、24年の初任給を引き上げる。サントリーホールディングスは23年に平均7%賃上げを実施。初任給も24年春入社から大学卒で前年比2万8000円増の26万円に引き上げる。