ニュースイッチ

1月の「船」輸出契約ゼロに。需要先食い、先行き不安広がる

海運市況は底を這う
1月の「船」輸出契約ゼロに。需要先食い、先行き不安広がる

海運各社は業績悪化を余儀なくされ、世界的に厳しい経営環境に置かれている

 日本船舶輸出組合(JSEA)が16日発表した1月の輸出船契約実績(一般鋼船)は、前年同月比90・2%減の11万6300トンとなり、9カ月ぶりにマイナスに転じた。契約隻数は3隻。いずれも2015年12月に契約していたが、JSEAへの報告が遅れたもので、1月は「実質ゼロ」(JSEA)。これまでに契約ゼロの月はなく、事実上過去最悪の実績になった。

 16年1月に施行された窒素酸化物(NOX)3次規制前の駆け込み需要で、昨年12月までは8カ月連続で前年実績を大きく上回ってきた。需要先食いの反動に加え、海運市況低迷などが重なり、新造船マーケットが一気に冷え込んだ格好だ。

 新造船マーケットが一気に冷え込んだ背景には複数の要因がある。一つは需要先食いの反動減。窒素酸化物(NOX)3次規制など追加コストを強いる国際ルール適用を見込んだ駆け込み発注が相次ぎ、2015年1―12月の契約実績は08年のリーマン・ショック以降の暦年として過去最高を記録。業界も「ここまで増えるとは想定しておらず、必ず反動がある」(日本造船工業会の村山滋会長)と、警戒してきた。

 懸念が現実になったが、厳しいのはこの先だ。世界の船腹需要は年5000万―6000万総トンと言われるが、中国や韓国、日本を中心とする新造船の供給能力は約2倍。船腹過剰や新興国経済の減速を受け、海運市況は底を這う。

 海上物流の動態を示すバルチック海運指数(BDI)は創設以来の最安値をつけた。海運各社は燃料安の追い風を受けながらも、業績悪化を余儀なくされ、第一中央汽船が経営破綻するなど世界的に厳しい経営環境に置かれている。商船三井は最大1800億円の特別損失を計上、長期契約がない中小型のドライバルク船のフリー運航から撤退するなど、船隊の大幅縮小を決めた。
<全文は日刊工業新聞電子版に会員登録して頂くとお読みになれます>

 
 
日刊工業新聞2016年2月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
国内の造船大手によると、半年から1年はLNG運搬船の受注は難しい、という声もあるようだ。

編集部のおすすめ