中国勢が世界上位「LiB用電解液」で反転攻勢、三菱ケミカルが日英米で増産
三菱ケミカルグループはリチウムイオン電池(LiB)用電解液の生産能力を米国、日本、英国で増強する。米テネシー州の工場では12月に工事を完了して生産能力を従来比2倍強に引き上げる。連結子会社のMUアイオニックソリューションズの四日市工場(三重県四日市市)では2段階で増強し、2026年に同2倍弱にする。完成車各社による旺盛な電動車(xEV)の生産計画に対応する。
三菱ケミカルグループは高性能添加剤を強みに車載用途を中心に販売を拡大し、25年にライセンス供与や委託製造を含め電解液の世界シェア25%(21年13%)を目指す。現在、複数件で顧客による認証作業が進んでおり、この販売の立ち上げにより、自社ブランドでの電解液販売は25年に現在の3―4倍へ拡大を図る。米日英の増産はこの一環で行う。
米国では生産能力を現在の年1万7000トンから12月に同約3万6000トンへ引き上げる。四日市では同1万6000トンから24年10月に同2万トン、26年6月に同3万トンに増強する。ボトルネック解消により増強するため、国内の投資額は抑えられる見通しだ。
欧米は急激な市場拡大が予想されるため、外部への生産委託も積極的に活用する。英国拠点は4月に3000トン上乗せして同1万4000トンとし、さらなる能力増強は委託も含め検討中という。
電解液市場はかつて日本勢がリードしていたが、現在は中国電池市場の拡大を背景に電解液も中国勢が世界上位を占める。三菱ケミカルグループは20年にUBE(旧宇部興産)と電解液事業を統合し、生産体制や電池性能のカギを握る添加剤などの技術力を一層強化した。中国を含む世界4極に生産拠点を持つ。高性能の車載電池市場の拡大を機に反転攻勢する。
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日刊工業新聞 2023年03月17日