回復する小型機需要掴む、三菱重工系が拡張した航空機エンジン修理・整備工場の全容
三菱重工航空エンジン(愛知県小牧市、牛田正紀社長)は、本社地区の航空機エンジンの修理・整備(MRO)工場の拡張を完了した。欧エアバスの小型機「A320neo」に搭載されるエンジン「PW1100G―JM」の整備需要拡大に対応する。民間機エンジンの整備台数を現状の月5―6台から2026年には同10台以上に、28―30年までに同15台に増やす計画だ。コロナ禍からの経済正常化で小型機の運航が回復し、MROに恩恵が及んでいる。(戸村智幸)
「天井が高いエリアを作ったことで、それほど広くしないで能力を3倍にできる」―。牛田社長は拡張の意義をこう強調する。
MROを担う第6工場に延べ床面積約2500平方メートルの一部2階建ての新エリアを拡張した。投資額は数十億円。新旧エリアの作業を明確に分け、効率化した。
同約3万2100平方メートルの一部3階建ての既存エリアにエンジンの分解・組み立て・検査などの人手作業を、新エリアに組み立て後の機械設備作業をそれぞれ集約した。エンジンのブレードのバランスを測定する専用機や研削盤などの機械だ。専用機は2台を追加導入する。整備士は現状の約120人を26年には200人以上に増やし、需要増に対応する。
三菱重工航空エンジンは22年にPW1100G―JMのMROを始めた。整備台数が右肩上がりを見込む背景には、A320neoの好調がある。小型機は短・中距離路線で運航され、中・大型機よりも需要回復が早い。特にA320neoは受注好調で、今後も運航増によりPW1100G―JMのMRO需要拡大が見込める。
同社はPW1100G―JMの製造にも参画している。燃焼器と燃焼器ケースを長崎工場(長崎市)で生産しており、投資額約100億円の第2期棟が25―26年に稼働予定だ。製造でも恩恵を受けるが、MROの方が成長性が高いとみる。
売上高のMRO比率は22年度は約4割を見込むが、26年度には製造にほぼ並び、5割に近づく計画だ。30年度までの売上高目標は約2000億円で、22年度見通しから大幅増が求められる。MROが達成のカギだ。
親会社の三菱重工業は民間機では米ボーイングの機体を分担製造するが、主翼を担当する中型機「787」はボーイングが品質問題で中断していた納入を22年8月に再開し、生産回復は途上だ。三菱重工航空エンジンは小型機の運航回復を追い風に、民間機事業をけん引する存在だ。
【関連記事】 航空機リースのからくり