ニュースイッチ

ルネサスがマイコンの新規顧客開拓で繰り出す初期評価ツールとは

仮想環境で無料提供
ルネサスがマイコンの新規顧客開拓で繰り出す初期評価ツールとは

ルネサスのWebシミュレータ

 ルネサスエレクトロニクスは電気機器の開発におけるマイコンの初期評価を、ウェブ(閲覧システム)上で仮想的に行えるサービスを10日から無料で提供する。半導体業界で同種のサービスは初めてという。ユーザー企業は評価ボード(基板)など各種ハードウエアを準備する必要がなくなり、初期評価作業を短縮できる。簡単な操作で動作条件を変更し、それぞれの消費電流を計算する機能も備える。今後1年間で数十件の利用を見込む。

 マイコンの初期評価は、電気機器の本格的な開発に入る前に実施する。評価ボードや関連ソフトなどで構成する「スターターキット」を用意し、性能や電流値、周辺部品との連携などの基本機能をテストする。

 ルネサスは、この初期評価を仮想的に行える「Web(ウェブ)シミュレータ」を開発し提供を始める。機能の一つ「消費電流計算ツール」では、動作条件を設定すると簡単に消費電流を割り出す。ユーザー企業は条件に応じてプログラミングを書き換える作業が不要になる。

 ウェブシミュレータは、まず産業機器や車載、家電などに幅広く対応したマイコン「RZ78シリーズ」向けに展開する。徐々に自社のほかのマイコン製品にも対応させる。

 電気機器開発に際して企業は、すでに保有するスターターキットに対応したマイコンを優先的に採用する傾向があるという。ルネサスはスターターキットが不要で初期評価を行えるウェブシミュレータを提案し、新規顧客の開拓を狙う。

 ルネサスは半導体だけでなく、周辺部品や関連ソフトまで含め提供するソリューション展開を積極化する。開発支援サービスも充実させ競争力を高める。
日刊工業新聞2016年2月10日 電機・電子部品
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
ルネサスが、マイコンの初期評価作業のウェブサービスを提供できるようになったのは、企業を取り巻く通信ネットワークが高速化したことが背景にある。裏を返せば特別なノウハウは不要で、今後、ルネサスの競合他社も同様のサービスに乗り出してくるだろう。それでも業界初にこだわったルネサスの姿勢を評価したい。絶え間ないサービス改善で先頭を走り続けてほしい。 (日刊工業新聞社編集局第一産業部・後藤信之)

編集部のおすすめ