「健康経営」は収益と結びつくのか。政投銀の格付融資5割増
経産省と東証も銘柄選定し企業を競わす
企業の健康経営への関心が高まっている。日本政策投資銀行が手がける「健康経営格付融資」の2015年度末の累積件数は前年度末比5割以上増の70件超になりそうだ。経済産業省と東京証券取引所は従業員の健康対策を進めながら、収益性の高い「健康経営銘柄」を選定した。従業員の健康管理を重視することが企業価値の向上につながるとの認識が取引先や投資家に広がっており、企業の取り組みを後押ししている。
政投銀の健康経営格付は従業員の健康に配慮している企業を選定し、120項目のチェックやヒアリングも実施する。評価は3段階で、評価に応じて融資の金利を優遇する。
11年度に世界で初めて開始。格付けの取得件数は12年度末4件、14年度末45件、16年1月末に66件と年々増えている。融資の累計金額も14年度末の約670億円から15年度末には800億円超に達しそうだ。健康経営への取り組みは財務情報のように数値化する手段がない。政府系金融機関の格付けは企業信用力を底上げするため、利用する企業が今後も増えそうだ。
経産省と東京証券取引所は共同で「健康経営銘柄」を選定。15年3月に開始し、2回目の16年1月には25社を公表した。
経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」の選定が、第2回を迎えた。同制度では経営課題として従業員の健康増進に取り組む企業を選ぶ。今回選ばれた25社のうち、新たに選ばれたのは11社。一方、今回は選ばれなかった初代選定企業は8社あった。この制度は、国民一人ひとりが晩年まで健康に生きられるようにする政策上の狙いがある。企業は政策の大目的を見据え、腰を据えて取り組む必要がある。
同制度は、東証に上場する企業のうち、業種ごとに1社が選ばれる。このため、第1回選定では「『なぜあの同業が選ばれて、ウチは選ばれてないんだ』という反響もあった」(経産省ヘルスケア産業課)。
これは表向き、業種ごとに経営指標水準に大きな差がある状態を考慮するため。だが同時に、歴史ある大企業に特有の同業他社との競争意識をくすぐることで、制度の定着を狙ったためとも言える。今回から結果のレビューがより丁寧に伝わるようになった。
ただ、企業は毎回の結果だけに一喜一憂するべきではない。健康経営の発想の一つには、「戦後、平均寿命が約50歳から約80歳に伸びた。30年という一世代分の期間が新たに生まれたことになる」(同)との認識がある。
最後の30年をいかに生きがいをもって健康に生きられるか。各人がいつでも、やりたいことをやれるだけの健康を保ち、生きがいが続くこと。それを現役時代に発見し、温め、思い思いに実行していける社会づくりを経産省が目指している。健康経営は、その一部を企業が担うもの。そう思えば、やる気も起きてきそうだ。
(文=米今真一郎)
経済産業省と東京証券取引所は21日、第2回健康経営銘柄として25社を選定、発表した。同銘柄は東証に上場する企業の中から、従業員の健康増進に経営課題として取り組む企業を評価する制度。住友林業やワコールホールディングスなど初選定企業が11社、アサヒグループホールディングスやTOTO、大和証券グループ本社など14社が第1回に続き2年連続で選定された。
TOTOの平野氏貞上席執行役員は「健康なくして企業活動そのものもない。ここ4、5年の活動で、やれば効果が出ると分かってきた」と手応えを実感。大和証券グループ本社の望月篤執行役員は「足かけ7年程の取り組みが評価されたのが昨年。今回はCHO(最高健康責任者)や健康経営推進会議設置など、取り組みのステージを上げている」と自信を深めていた。
<第2回健康経営銘柄に選定された企業は次の通り>
▽住友林業▽ネクスト▽アサヒグループホールディングス▽ローソン▽ワコールホールディングス▽花王▽塩野義製薬▽テルモ▽コニカミノルタ▽東燃ゼネラル石油▽ブリヂストン▽TOTO▽神戸製鋼所▽リンナイ▽川崎重工業▽IHI▽トッパン・フォームズ▽伊藤忠商事▽リコーリース▽大和証券グループ本社▽東京海上ホールディングス▽フジ住宅▽東京急行電鉄▽日本航空▽SCSK
政投銀の健康経営格付は従業員の健康に配慮している企業を選定し、120項目のチェックやヒアリングも実施する。評価は3段階で、評価に応じて融資の金利を優遇する。
11年度に世界で初めて開始。格付けの取得件数は12年度末4件、14年度末45件、16年1月末に66件と年々増えている。融資の累計金額も14年度末の約670億円から15年度末には800億円超に達しそうだ。健康経営への取り組みは財務情報のように数値化する手段がない。政府系金融機関の格付けは企業信用力を底上げするため、利用する企業が今後も増えそうだ。
経産省と東京証券取引所は共同で「健康経営銘柄」を選定。15年3月に開始し、2回目の16年1月には25社を公表した。
晩年まで健康に過ごすために
日刊工業新聞2016年1月25日
経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」の選定が、第2回を迎えた。同制度では経営課題として従業員の健康増進に取り組む企業を選ぶ。今回選ばれた25社のうち、新たに選ばれたのは11社。一方、今回は選ばれなかった初代選定企業は8社あった。この制度は、国民一人ひとりが晩年まで健康に生きられるようにする政策上の狙いがある。企業は政策の大目的を見据え、腰を据えて取り組む必要がある。
同制度は、東証に上場する企業のうち、業種ごとに1社が選ばれる。このため、第1回選定では「『なぜあの同業が選ばれて、ウチは選ばれてないんだ』という反響もあった」(経産省ヘルスケア産業課)。
これは表向き、業種ごとに経営指標水準に大きな差がある状態を考慮するため。だが同時に、歴史ある大企業に特有の同業他社との競争意識をくすぐることで、制度の定着を狙ったためとも言える。今回から結果のレビューがより丁寧に伝わるようになった。
ただ、企業は毎回の結果だけに一喜一憂するべきではない。健康経営の発想の一つには、「戦後、平均寿命が約50歳から約80歳に伸びた。30年という一世代分の期間が新たに生まれたことになる」(同)との認識がある。
最後の30年をいかに生きがいをもって健康に生きられるか。各人がいつでも、やりたいことをやれるだけの健康を保ち、生きがいが続くこと。それを現役時代に発見し、温め、思い思いに実行していける社会づくりを経産省が目指している。健康経営は、その一部を企業が担うもの。そう思えば、やる気も起きてきそうだ。
(文=米今真一郎)
住友林業など11社初選定
日刊工業新聞2016年1月22日
経済産業省と東京証券取引所は21日、第2回健康経営銘柄として25社を選定、発表した。同銘柄は東証に上場する企業の中から、従業員の健康増進に経営課題として取り組む企業を評価する制度。住友林業やワコールホールディングスなど初選定企業が11社、アサヒグループホールディングスやTOTO、大和証券グループ本社など14社が第1回に続き2年連続で選定された。
TOTOの平野氏貞上席執行役員は「健康なくして企業活動そのものもない。ここ4、5年の活動で、やれば効果が出ると分かってきた」と手応えを実感。大和証券グループ本社の望月篤執行役員は「足かけ7年程の取り組みが評価されたのが昨年。今回はCHO(最高健康責任者)や健康経営推進会議設置など、取り組みのステージを上げている」と自信を深めていた。
<第2回健康経営銘柄に選定された企業は次の通り>
▽住友林業▽ネクスト▽アサヒグループホールディングス▽ローソン▽ワコールホールディングス▽花王▽塩野義製薬▽テルモ▽コニカミノルタ▽東燃ゼネラル石油▽ブリヂストン▽TOTO▽神戸製鋼所▽リンナイ▽川崎重工業▽IHI▽トッパン・フォームズ▽伊藤忠商事▽リコーリース▽大和証券グループ本社▽東京海上ホールディングス▽フジ住宅▽東京急行電鉄▽日本航空▽SCSK
日刊工業新聞2016年2月12日1面