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大学定員「23区規制」に追加緩和、例外規定は改革の道標

大学定員「23区規制」に追加緩和、例外規定は改革の道標

地域分散型の学習モデル(内閣府資料より)

東京23区内の大学の定員増加を原則認めない「23区規制」にデジタル人材の例外規定が追加される。もともと大学の経営に配慮した例外規定があり23区内の大学の定員は増え続けている。これがさらに緩和される。文部科学省は国立大学に臨時的な定員増を認める仕組みを検討する。それでもデジタル人材の不足を補うには不十分と指摘される。東京と地方で賛否が分かれた23区規制は例外をテコに大学を政策誘導する仕組みとして機能を残していく。(小寺貴之)

「IT人材の需給ギャップはますます広がる。思い切った定員増を考えないと、また5年後に政策の効果がなかったということになりかねない」―。オフィスサキ(東京都千代田区)の秋山咲恵社長は懸念を示した。内閣官房の有識者会議の一幕だ。

文科省はデジタル人材が2024年度までに24万人が不足すると試算する。この不足を満たすには毎年少なくとも1万2000人増やす必要があり、大学の定員増は懸案だった。中でも大学院修士課程定員の23%を占める23区内の大学の人材育成能力を活用しなければ大幅な拡充は困難だった。そこで23区規制に新たな例外措置を盛り込む。

規制緩和に反対してきた全国知事会も、地方企業との就業体験や研修を組み込んだ教育プログラムを条件に容認した。一定期間後は元に戻す臨時的な定員増に限るなど、文科省は知事会と連携して審査し対象プログラム認定する。さらに全国で情報系教員の取り合いになるため、地方大学への教員確保支援策を知事会は求める。文科省は国立大学への臨時的な特例定員増を認める仕組みを検討する。

ただし特例期間を終えた後の教員の雇用が問題になる。23区規制は18年から10年間の時限措置だ。特例期間の終了時には規制も終了している可能性はあるが、「知事会は延長の立場」(内閣府)だ。文科省は大学全体での改廃を含めた定員調整を想定する。

大学が学部を増やしても進学する高校生が足りない問題もある。リクルート進学総研の小林浩所長は「3分の2の高校で、受験勉強のために文理選択をさせられる。早い段階からデジタル人材の未来を見せる必要がある」と指摘する。規制しても緩和しても実行性に課題を抱えている。

文科省は大学の理系転換や地域分散型の学習モデル構築を急ぐ。大学は都心にあっても、地域の拠点での学習とオンライン教育を組み合わせて学ぶ姿を描く。23区規制では東京への一極集中は止まらなかった。一極集中と共存する地方創生を模索していく。

日刊工業新聞 2023年02月20日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
23区規制は規制をかけるときも弛めるときも強引なストーリーと抜け穴が駆使された政策で、どちらも掲げられた目的は達成される見込みはないと批判されています。規制時は東京への転入超過の解消のために定員増を抑制しました。定員抑制でなく増分の抑制です。この効果は観測でき、23区定員増加の年平均成長率は半減しました。東京都の大学への入学者超過は規制前後で大きく変わらず7万で推移しています。今回の緩和はデジタル人材不足を掲げました。24年度までに24万人が不足し、これを年1.2万人増で補うとしています。試算の通りなら需給ギャップは拡大し続けます。緩和の根拠に3.3万人の情報系の就業者に対して、1.3万人しか理系からきていない、いわゆる文系人材で埋めているという危機感があります。ただ情報系学部は2.1万人の定員があるのに情報産業に進んでいません。最も必要とされている先端IT人材も博士課程は1149人の定員があるのに、情報産業に進んだのは200人以下です。日本の情報産業がデジタル人材に選ばれていないのではないかと心配になってしまいます。定員増が叶ったとしても学生にとっては幸せなことなのかどうか。23区規制には産業競争力や大学経営、人材育成、地方創生の社会課題が交差しています。いずれも簡単には解決できません。成熟した民主主義の現れを見ている気がします。今回の規制緩和で23区規制が3002億円の基金事業の邪魔にならないようにはなりました。例外規定は大学改革への道標として機能していくと思います。

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