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【ディープテックを追え】普及進む風力発電、メンテナンスにロボの力

#121 LEBO ROBOTICS

再生可能エネルギーの拡大により、発電機のメンテナンスの効率化を目指すスタートアップが生まれている。LEBO ROBOTICS(東京都杉並区)は風力発電機向けのサービスを展開する。ブレードの保守をロボットで効率化する。今後も増加が続く風力発電市場で事業拡大を狙う。

きっかけは環境問題

同社の浜村圭太郎代表が再生可能エネルギーの世界に飛び込んだのは、前職の豊田通商でのこと。「2000年ごろからアジアの国で経済が発展する中で環境問題を意識せざるを得なかった。この問題に取り組める再生可能エネルギーに可能性を見出した」ことがきっかけだ。当時、化学製品の販売を手がけていたことからブレードの補修材に目を付けた。ただ、実際の補修作業を行うのは人間だ。高所作業車などを使うため、危険かつコストも高い。「これをロボットに置き換えれば、効率化が図れるのではないか」と起業を決めた。

浜村代表

ロボットとAIでメンテナンス

風力発電機のメンテナンスは点検と保守に分かれる。点検は主に目視点検と導通検査の二つだ。目視検査はブレードの表面に傷などの損傷の有無を見つけるもの。この結果によって人手での補修を実施するか判断する。同社は国内販売代理店を務めるフランスのCornisの人工知能(AI)を使った画像診断システムを応用する。地上の望遠カメラでブレードの表面を撮影。その画像をAIで分析して、損傷の有無を判断する。

同社のロボット

風車が備える避雷針の異常を見つける導通検査ではロボットを活用する。ロープを使って巻き上げたロボットの先端に付けた部品で、適切に導通しているか検査する。22年には40機ほどの発電機でロボットによる点検を行った。

保守ではブレードの傷にパテを塗り研磨し、塗装する用途でロボットを活用する方針だ。現在ロボットを開発中で、23年にも商用モデルを展開する計画だ。

24年には導通検査と保守の機能を統合し、全自動でメンテナンスを行えるロボットを開発する。将来はロボットで行ったメンテナンスのデータを活用し、保守の提案などができるソフトウエアの開発につなげる。ロボットを使った予備保全によって、人手不足と発電効率の向上に寄与できることを訴求する。Abies Ventures、三井住友海上キャピタル、KDDIなどから約3億円の資金調達を実施し、開発にアクセルを踏む。

海外展開ではドイツに現地法人を設立した。ポーランドでロボットの実証を始める。まずは自社でロボットを使った保守サービスを売り込む。将来はメンテナンス事業者へロボットの販売も見据える。26年ごろにも1万機のロボットでサービスを行う計画だ。浜村代表は「同時期には海外売り上げが4分の3を占める想定。成長ポテンシャルが大きい海外市場に力を入れる」と話す。

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