次世代原子炉「高温ガス炉」実証見据え、経産省が燃料工場を支援
経済産業省は2023年度にも高温ガス炉の燃料加工工場の刷新支援に乗り出す。高温ガス炉の実証炉を29年から製作・建設し、30年代に運転する構想を掲げており、燃料加工工場を現在の実験炉向けから実証炉向けに刷新する計画。燃料部品の生産投資も支援する方針で、高温ガス炉の実証段階を見据えてサプライチェーン(供給網)を立て直す。
燃料加工工場の刷新に伴う設計や建設、新規制基準の対応にかかる費用を補助する方向。現在、日本原子力研究開発機構の高温ガス炉実験炉「HTTR」(茨城県大洗町)向けとして、原子燃料工業(横浜市鶴見区)東海事業所(茨城県東海村)が燃料加工工場を持つ。
実証炉向けに刷新するにあたり、既存工場を更新するか、新設するかは未定。支援先も今後決定する。総投資額は300億―500億円を見込む。
経産省は23年度予算案で高温ガス炉実証炉開発事業として48億円を計上した。25年までの3年間で431億円を充てる計画だ。このうち大半を、高温ガス炉の実証炉設計やHTTRの水素製造実証などの支援に充て、一部を燃料加工工場の設計支援にも振り向ける考え。
HTTRは21年、原子力規制委員会による新基準規制への対応を経て10年ぶりに再稼働した。原子燃料工業の東海事業所も規制対応で現在稼働していない。原子力発電所の再稼働が進まないこともあり、HTTRや軽水炉向けの燃料に使う燃料被覆管のサプライヤーが撤退しており、同部品の生産体制構築も支援する方針だ。
高温ガス炉は、冷却材にヘリウムガスを使い、従来の軽水炉より高い温度の熱を取り出せる。発電だけでなく水素製造にも利用できるほか、安全性も高く、次世代原子炉の一つとして実用化が期待されている。
次世代原子炉に限らず、原子力をめぐるサプライチェーンの弱体化が懸念されている。政府はサプライチェーンの維持・強化に向けて、部品の供給途絶対策や事業承継を支援する方針を打ち出している。