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三菱樹脂、食文化が変わるアジアで包装用多層フィルムを生産

18年めど、東南アに工場
三菱樹脂、食文化が変わるアジアで包装用多層フィルムを生産

ASEANでの拡販とともに、医療分野向けの開拓を急ぐ

 三菱ケミカルホールディングス(HD)傘下の三菱樹脂は2018年度をめどに、加工食品に使われる包装用多層フィルムの海外生産に乗り出す。東南アジア諸国連合(ASEAN)域内に工場を新設し、食品の品質保持に寄与する高機能フィルムを生産する。投資額は10億円弱とみられ、16年度中にも立地を決める方針。従来は浅井工場(滋賀県長浜市)から輸出していた。経済成長を背景に生活水準が向上するASEAN地域の需要を取り込むほか、日本に輸出される加工食品向けにも供給する。

 三菱樹脂が海外生産するのは複数の樹脂原料を一度に押し出してつくる多層フィルム。樹脂の組み合わせによりガス遮断性や高耐熱性、剥離性、再剥離性などを付加できる。ASEANではチルド食品やレトルト食品を中心に需要増が見込める。鮮度の維持や異物混入の防止など「食の安全・安心」意識が浸透したことも好材料と判断した。ナイロンなど原材料は現地での調達を検討する。

 新工場の稼働に併せて浅井工場は輸出向けの供給を段階的に縮小する。余剰能力は品質保持期間を延長できる「バリアトレー」や、再剥離機能で利便性を高めたフィルムなど高付加価値製品の生産に振り向ける。15年には食品安全管理の国際規格「FSSC22000」も取得し、もう一段の拡販につなげる。

 ただ一般に人口減少が著しい日本では加工食品市場の拡大が難しい。このため、同社はガーゼや注射針の包装フィルム、輸血用バッグといった医療分野向け市場の開拓を加速。14年には約14億円を投じて浅井工場を増強し、生産ラインを増設した。市場環境を見て、医療分野の生産を増やしていく考えだ。

 足元は国内のハムやソーセージの販売が好調で多層フィルムは伸長。共押出多層フィルムは20年度に売上高100億円の目標を掲げてきたが、18年度にも達成する公算が大きい。

20年度の売上高は当初目標より3割ほど上振れしそうだ。

(2016年2月10日 素材・ヘルスケア・環境)
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
「アジア」といって思い浮かべるのが、街角にある屋台だ。安くて手軽で、ボリュームもあるので、地元の人にもなじみが深い。だが、スーパーやコンビニの発達もあり、食がその場で食べるものから、日本のように外で買ってきて家で食べるといった中食が増えていく傾向がある。また品質保持や衛生管理、デザイン性などの点でも包装するニーズは高い。食文化が変わる中、高品質のフィルムは欠かせないものなのかもしれない。

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