ニュースイッチ

国際貨物コロナ前水準超え、物流会社が講じ始めた対策

国際貨物コロナ前水準超え、物流会社が講じ始めた対策

設備増強を図る空港での貨物業務(スイスポートジャパン)

関西など西日本での貨物需要増に対応ー。関西国際空港の国際貨物取り扱い量がコロナ禍前の水準を超え、国内貨物は関空も大阪国際空港(伊丹空港)も前年を上回る。そんな状況を前に、物流関連各社が対策を講じ始めている。UPSジャパン(東京都港区)は関空と米国のアンカレジを結ぶ貨物便の機材を大型化し、2月20日に関空と北九州空港を結ぶ便を就航する。西日本鉄道などは4月から輸出許可を受けた貨物を大阪から成田国際空港や羽田空港に鉄道で運ぶ。スイスポートジャパン(大阪府泉佐野市)は貨物関連設備を増強する方針。

UPSは関空―アンカレジ線の機材を「ボーイング767―300型機」から「同747型機」にアップグレードした。UPSが保有する航空機では最大でかつ低燃費の機材。最大積載量は140トンで従来の2倍以上となった。輸送能力に柔軟性を持たせて需要動向に対応した輸送サービス提供につなげる。

関空―北九州線は同社初の九州に就航する定期便で週5便で運航する。主に九州から輸出する貨物の需要増を見込む。九州から最短1―3日で世界220以上の国・地域への配送が可能になる。

西日本鉄道やJR貨物などが4月から羽田空港や成田空港への保税輸送を始める拠点「西鉄りんくう貨物センター」(大阪府泉佐野市)

福岡県の服部誠太郎知事は「北九州空港の貨物拠点化を目指して取り組んできた成果。新たな物流ネットワーク構築での輸出促進に加え、滑走路3000メートル化へ大きな弾みになる」と歓迎する。半導体や電子商取引(EC)関連を中心に国際貨物需要が高まっており、貿易業務効率化や競争力強化につながる。

UPSは大阪の通関オフィスを移転して面積を約2倍に広げるなど業務拡大への対応も進めている。

西日本鉄道はセンコーやJR貨物と共同で、航空貨物を保税輸送する。税関から輸出許可を受けた外国貨物を西鉄りんくう貨物センター(大阪府泉佐野市)から成田空港や羽田空港の貨物地区にコンテナ列車で運ぶ。関空発の国際航空便の便数の回復が遅いため、比較的便数の多い成田発や羽田発を使って輸出できるようにするのが狙い。

スイスポートは関空と成田空港で扱う貨物の量がコロナ禍前の水準を超えており、事業強化する。大学卒や専門学校卒に加えて新たに高校卒も採用して人材を確保する。航空機の整備支援など空港のハンドリング業務を手がける中で貨物業務を「軸になるビジネスに育てる」(吉田一成社長)と注力する構え。

関空の2022年の国際貨物量は前年比3%減の78万トンだったが、コロナ禍前の水準と比べると下回ったのは11月のみだった。国内貨物は関空が同23%増の7000トン、大阪空港が同11%増の8万7000トンと前年を大きく上回った。

関空は24時間運用のメリットが生かされ、貨物便の約3分の1が深夜早朝時間帯に出発している。また同時間帯に着陸する定期便は着陸重量の50%分の着陸料が割り引かれる。原材料コストや物価が上がる中で物流コスト抑制策として利用が増える可能性がある。25年の大阪・関西万博に向けて物流の活性化も見込まれる。

日刊工業新聞 2023年02月02日

編集部のおすすめ