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マネーフォワードが自由化見据え「会計・電力」をセット販売

中部電力と連携、小規模事業者などをターゲットに
マネーフォワードが自由化見据え「会計・電力」をセット販売

右は辻CEO

 マネーフォワード(東京都港区、辻庸介社長兼最高経営責任者〈CEO〉、03・6453・9160)が、4月に迫る電力小売りの完全自由化を見据えて、電力会社との連携を進めている。中部電力と契約する企業に、自社のクラウド型会計ソフトウエアと電力サービスのセット販売を4月に始める。小規模事業者向けの電力サービスも自由化により有力な市場と見込まれる。IT化も遅れていることから、同ソフトの拡販を狙う。

 「電力会社は地場の顧客をつなぎ留めるために、電力料金の比較のほかにも付加価値の提供を考えている」。田平公伸執行役員は、電力会社と連携する狙いをこう説明する。

 中部電力の契約者には、飲食店や美容室、小売店など小規模事業者が多い。両社は会計業務の負担を減らせるクラウド型会計ソフト「MFクラウド会計・確定申告」と電力のセットプランを開発、自由化に合わせて販売する。

イベントやセミナーなどで経営に役立つサービスとして訴求し、「我々と中部電力、税理士の3者が組む」(田平執行役員)戦略だ。

 零細事業者や個人事業主の場合、人手や費用面からITを経営に生かせていないことが多い。自由化に伴い電力料金を低減する意識が高まることが見込まれる。これに合わせて、経理を効率化する観点から同ソフトの活用を提案する。

関電とはポイントサービスの一括管理


 マネーフォワードは関西電力とも連携している。世帯の電力使用量や請求金額などを確認できる関電の会員サービスに、マネーフォワードが持つ技術を提供し、さまざまなポイントサービスを一括管理できるようにした。

 「我々から関電に技術の導入を持ちかけた」(同)という。関電は電力市場の競争で、主婦層の取り込みを重視している。この層はポイントの関心が高いく、煩雑な管理の解消につなげる点を訴求できる。会員サービスの利用が増えそうだ。

 マネーフォワードは家計・資産管理のITサービスや、企業向け会計ソフトの顧客を拡大している。電力会社との関係を強化することによって、電力契約者に対してITサービスの認知度を高める狙いだ。さらに「金融機関や税理士事務所とのつながりを深めていく」(同)効果も見込める。

 一方、電力会社も割安な料金プランだけでは守勢に回りかねず、ITによる付加価値は魅力に映る。中部電との取り組みが、小規模事業者のIT化を促進するモデルケースになる可能性もありそうだ。
(文=孝志勇輔)
日刊工業新聞2016年2月10日情報面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
マネーフォワードは注目、期待のベンチャー。辻さんはもはや有名人だが、京大農学部を出てソニー入社。マネックス証券出向、MBA取得し12年に起業という経歴。次はヘルスケア分野も狙っているとか。

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