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生産性30%向上、鹿島が仕上げにかかる「スマート生産」の全容

生産性30%向上、鹿島が仕上げにかかる「スマート生産」の全容

耐火被覆吹付ロボットには梁の形状を認識するセンサーを搭載し、従来ロボットの手間を解消

鹿島は2025年度に向け、建築工事の生産プロセスを“進化”させる「鹿島スマート生産ビジョン」の仕上げにかかる。施工ロボットの導入や管理の遠隔化、さらに建築の3次元(3D)モデリング技術「BIM」も取り入れることで、生産性と施工品質を向上。働き方改革の実現にもつなげる。「作業と管理を合わせて、30%の生産性向上を目指す」(伊藤仁専務執行役員)計画だ。

システム天井の施工ロボットにより、8人で手がけていた作業を4人に省人化できる

鹿島は18年11月にスマート生産ビジョンを公表。18―19年に施工した「名古屋伏見Kスクエア」(名古屋市中区)の18技術を皮切りに、19―21年の「横濱ゲートタワー」(横浜市西区)でも15技術を導入し効果を検証してきた。21年10月からはJR大宮駅に近い「大宮桜木町1丁目計画」(さいたま市大宮区)に19技術を導入し、理想の建築現場を具現化しようとしている。

大宮の現場で活用する新技術の一つが、システム天井を施工するロボットだ。ロボットアームで天井パネルを持ち上げ、決められた場所に組み込む。同ビジョンが目標に掲げる「作業の半分はロボットと」に沿い、従来は移動式の足場を組んで8人が手がけていた作業を4人で済ませられるようにした。高所作業だけでなく、負荷のかかる姿勢での作業も大幅に軽減できる。

鉄骨の梁(はり)に耐火被覆材を吹き付けるロボットもユニークだ。梁の形状を認識するセンサーを搭載し、形状データの事前入力が必要だった従来ロボットの手間を解消した。粉じんの発生を伴う作業をロボットに任せ、作業環境の改善を図る。同現場では工事用エレベーターと連携した搬送ロボットや作業員に追従する運搬ロボット、墨出しロボットなども稼働している。

「現場で現物を確認し、現実を認識する」という三現主義はそのままに、定点カメラなどを活用した管理の遠隔化にも磨きをかける。事務所には本社や協力会社とつなぐリモート会議システムを完備。400メートル離れた現場の進捗や状況の確認に用いるモニタリングシステムや、資機材や作業員の位置をBIMによる3Dモデル上でリアルタイムに把握する仕組みも構築した。

鹿島は同ビジョンの実現を、建設現場で深刻な「担い手不足の解消」への“解”と位置付ける。自動化できる作業はロボットなどでの補完・代替を進め、どうしても人手が必要な工程に作業員を配置する体制を整える考えだ。「ロボットやIoT(モノのインターネット)を駆使した“格好いい現場”」(押味至一会長)とすることで、若年層の入職を促す効果も思い描く。

24年4月に適用される時間外労働の上限規制を前に、もう一つ期待するのが「働き方改革」への効果だ。単純作業や負担の多い作業を自動化できれば、作業員はその時間を職能や経験の拡充に充てることも可能になる。現場事務所でも業務の効率化により、労働環境の改善が見えてくる。各種ロボットやシステムはほかの現場にも積極的に展開し、新たな現場の形を追求する。

日刊工業新聞 2023年01月24日

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