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住友鉱、材料事業に3年間で500億円超投資―下流へ投資シフト

 住友金属鉱山は2016―18年度の3年間に、材料事業の設備投資額を500億円以上にする。銅やニッケルなど金属価格の下落で、”上流“の鉱山開発を主体とした資源事業の収益が悪化する中、”下流“の材料事業に積極投資し収益を下支えする。

 車載バッテリー向け電池材料、情報端末向け結晶材料を強化。電池材料のうち、テスラモーターズなどの電気自動車(EV)向けバッテリーに使われるニッケル酸リチウムは、もう一段の増産投資に踏み込む方針。

 住友鉱は10―12年度、13―15年度の各3カ年で銅などの鉱山権益取得を含む設備投資に2000億円超を投じた。大半は上流の資源(権益取得を含む)と中流のニッケルの製錬の2事業が占めた。

 しかし、金属価格の下落や海外大型プロジェクトの一巡など、資源ビジネスが停滞するなか、収益拡大が期待できる下流の材料事業に投資の重点をシフトする。投資額は16年度からの3年間で500億円を上回り、過去最高とする見込み。

 すでに結晶材料では電子部品各社の要請に応じ、スマートフォンなどに使われるSAWフィルター向け結晶材料のタンタル酸リチウム/ニオブ酸リチウム(LT/LN)基板を増産し、国内3拠点に約60億円を投じることを決定した。

 16年3月期の経常損益は、チリの銅鉱山の減損損失689億円が発生し、40億円の赤字に転落する見通し。

非鉄各社の4―12月期、銅下落が業績直撃―三井金属は減損損失193億円



 中国の景気減速などを背景とした金属価格の下落が、非鉄各社の業績を直撃している。

 三井金属は3日、2015年4−12月期連結決算で減損損失約193億円を計上する見通しと発表した。銅の価格下落に伴い、持分法適用会社であるパンパシフィック・カッパー(PPC)の子会社「MLCC」が運営するチリのカセロネス銅鉱山に関連する固定資産の評価を見直した。これにより、16年3月期連結決算予想の当期損益は、15年11月の80億円の黒字から大幅に下振れ、赤字転落の可能性も出てきた。

 同社は9日に15年4−12月期決算を発表する予定。

 JXホールディングス(HD)も3日の4−12月期連結決算で、チリのカセロネス銅鉱山で減損損失800億円を計上すると発表した。

 同社の金属部門、JX金属の15年4−12月期の経常利益は前年同期比77・2%減の87億円と大幅減。銅価の下落による悪化分の影響額は前年同期比で約228億円に上る。

 また、16年3月期連結決算予想の経常利益も15年11月の320億円から250億円減の70億円に下方修正する見通し。

日刊工業新聞2016年2月9日 総合1面/2016年2月4日 素材・ヘルスケア・環境面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
非鉄各社は資源開発、金属製錬、材料加工のサプライチェーンで利益を生み出しているが、上流の資源開発は、近年の金属製品価格の下落で思うような収益を上げられていない。特に住友金属鉱山のシエラゴルダ、JX金属のカセロネスと、2つの銅鉱山は操業してから歴史も浅く、古参の銅鉱山と比べても「損益分岐点」が高いことがネック。銅価下落のインパクトは大きい。非鉄各社は一様に加工事業の強化を掲げており、加工事業の競争も熾烈だ。厳しい競争に打ち勝つ製品開発力が問われている。

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