軸は超微細ファイバー、北越コーポレーションのグループ戦略
北越コーポレーションは洋紙需要の先細りや環境機運の高まりを受け、プラスチック削減や脱炭素化に資するグループ経営に注力する。紙は木材由来でそもそも環境にやさしい。国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて、従来は生産が集約された事業が脚光を浴びつつある。
代表例がバルカナイズドファイバー(VF)を扱う子会社の北越東洋ファイバー(静岡県沼津市)だ。VFは紙の原料、パルプを塩化亜鉛水溶液で処理し、繊維が超微細な素材。160年以上前に英国で発明され、1934年に旧東洋ファイバー、35年には北越製紙長岡工場(新潟県長岡市)で生産を始めた。旧東洋ファイバーを買収後、2014年には生産性向上を目的にVF事業を一本化した。
競合はドイツや中国の企業だが、英国の高級スーツケース「グローブ・トロッター」向けは1社で供給する。フックなどアパレル副資材、研磨ディスク基材、モーター内の電気絶縁材にも使われる。
22年にはVFの「微細構造制御と炭素繊維複合化への展開」でセルロース学会技術賞を受賞した。強靱(きょうじん)で絶縁性を持つVFを研究すると、今日注目されている新素材、セルロースナノファイバー(CNF)が濃密に詰まっていることが明確になった。
ファイバー類は樹脂代替材であり、グループとしての品ぞろえ充実、総合的提案に不可欠。さらに底堅い需要が安定収益を支える。一連の研究成果はテラスペース(京都市左京区)の「紙の人工衛星」プロジェクトへの部材供給にもつながる。
北越コーポの海外売上高比率は約4割で、連結最大の収益源がカナダの子会社、アルパックだ。15年に買収した同社は北米最大のパルプ工場を持ち、クラフトパルプの年産能力は63万トン。脱炭素化に伴う紙素材への見直しなどで需要は旺盛だ。
アルパックが管理契約する森林は640万ヘクタールと国際的なFSC認証の森林面積では世界最大級。北越コーポは「二酸化炭素(CO2)吸収で気候変動対策に大きく貢献する可能性がある」と期待し、50年の排出量実質ゼロに向け気勢を上げる。