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受注額は過去最高へ…経済減速懸念も、ロボット市場に死角はなしか

受注額は過去最高へ…経済減速懸念も、ロボット市場に死角はなしか

世界で旺盛な自動化需要が継続(昨年開かれた「2022国際ロボット展」)

世界経済の減速懸念と反対に、ロボット市場は2023年も成長が継続しそうだ。日本ロボット工業会は23年の産業用ロボット年間受注額(非会員含む)が過去最高の1兆1500億円(前年比3・6%増)に上るとの見通しを示した。半導体や鋳物部品などの不足の解消は道半ばにあり「作りたくても作れない」状況は長期化する様相だが、メーカー各社はサプライチェーン(供給網)対策を強化しながら確実な成長を目指す。(増重直樹)

「金融不安が起きない限り、工場自動化(FA)業界は減速しないだろう」―。安川電機の小笠原浩会長兼社長は23年のロボット受注について見解を述べる。事実、ロボット市場は驚異的な速度で成長している。国際ロボット連盟(IFR)によると、21年の産ロボ年間設置台数(世界)は中国市場がけん引し約51万7000台を記録。過去最高だった18年の約42万3000台を大きく更新した。

各社は手を緩めない。ファナックの稲葉善治会長は「23年のテーマはサプライチェーンのレジリエンス(強靱性・耐久性)」と明かす。中国政府は「ゼロコロナ」政策を事実上終了したが、今後も工場の稼働が不安定な状況は十分に考えられ、部品確保が継続課題となる。「安心して生産を継続できる体制作りが重要」(稲葉会長)とする。同時に協働ロボットの拡販を図る考え。同社の山口賢治社長は「さまざまなアプリケーションをワンパッケージで提供するなど使いやすさをさらに高めたい」と語る。

安川電機も23年度に変種変量の生産ラインなど向けの新型自律ロボット「MOTOMAN―NEXT(モートマンネクスト)シリーズ」を投入予定だ。「23年の設備投資のメーンコンセプトは内製化」(小笠原会長兼社長)とし、新工場建設に着手してコア部品の内製比率を高め、部品調達難の事態に備える。

川崎重工業の橋本康彦社長は「5―10年後に大きな市場になる」とサービスロボットを含むソーシャルロボット開発に力を入れる方針。同社の髙木登執行役員ロボットディビジョン長は「社会実装に向け、23年は概念実証(PoC)を増やしたい」と意気込む。自動車関連や半導体製造装置向けに限らず「総合ロボットメーカー」としての存在感を高める1年となる。

強気な受注額見通しの一方、「サプライチェーンが壊れたら万事休すだ」(メーカー幹部)との声も聞かれる。世界で自動化需要が続く中、23年は業界として生産安定化への動きが一段と加速する。


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日刊工業新聞 2023年01月16日

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