光合成が始まる瞬間のCO2固定代謝、神戸大・理研が藍藻の機構解明
神戸大学の蓮沼誠久教授や田中謙也特命助教、理化学研究所の白井智量上級研究員らは、藍藻(シアノバクテリア)が暗期から明期へと移る際に起こる光合成において、二酸化炭素(CO2)を固定するタイミングの代謝変化の測定に成功した。明暗環境下において迅速な光合成の開始が可能になるような、有用物質生産株の開発につながることが期待される。
研究チームは以前から細胞の中の代謝物を測定する「メタボローム解析技術」の研究を進めてきた。対象物を分単位のサンプル採取で計測していたが、秒単位のサンプルで計測できるように技術を改良した。この技術の出口戦略として、世界的な潮流にあるCO2の固定化に応用した。
藍藻は、地球上の大気の生成に寄与したとされる原核生物。暗期から明期に移った藍藻が、光合成による炭素固定をただちに活性化させる仕組みは分かっていなかった。このため藍藻細胞を暗期から明期に移して秒単位でサンプルを採取し、高速代謝の変化を計測することにした。
結果、計三つの解糖系代謝物が、光合成する植物特有のカルビン回路代謝物へと変換したことなどを確認。また暗期から明期に移って約20秒経過した際に、CO2の固定が始まることも明らかにした。成果は英科学誌プラント・フィシオロジーに掲載された。
日刊工業新聞 2023年01月12日