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「現金封筒」が消える…高齢者に配慮で維持する金融機関も「廃止視野」の声

「現金封筒」が消える…高齢者に配慮で維持する金融機関も「廃止視野」の声

都内にある信用金庫信用組合の封筒(イメージ)

銀行の店舗や現金自動支払機(ATM)で現金封筒の廃止が進んでいる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)やペーパーレス、経費削減などが目的だ。一方、日刊工業新聞社が東京都内の信用金庫・信用組合を対象に調べたところ、高齢者層への配慮などから現金封筒を維持する傾向がある。ただし、今後については廃止を検討する機関もある。

都内に本店を構える特定業種向け金融機関を除く23信用金庫、13信用組合を対象にアンケートを実施。16信金、8信組から回答があった。現状は24全ての信金・信組が全店舗で現金封筒を配布しており、サイズやまち付きなど「2種類」の配布が8信金・信組と最も多く、最大「4種類」発行する信金・信組が4機関あった。

封筒を発行する理由は「顧客からの需要があるから」が19機関で最も多く、次いで「顧客サービス向上のため」が11機関、「今まで発行しているから」が7機関だった(最大二つまで回答可)。

今後については、「当面はサービス向上の一環として現金封筒の設置を継続予定」(東京厚生信組)、「現状での変更の予定はない」(朝日信金)、「高齢者の需要が高いのでやめるのはなかなか難しい。経費はかかるがライバルの金融機関の動きもあるので先頭切って封筒をなくす訳にはいかない」(匿名)と継続するとの声が多い。

一方、当面は現金封筒の発行を続けるが、廃止を視野に入れた意見もある。「SDGsの観点からの廃止については現時点で優先順位は低いが、業界の動向を注視し、随時検討したい。廃止する場合には貸与型現金袋(カバン)の導入も検討したい」(足立成和信金)といった声のほか、「高齢者を中心に現金のニーズは当面続くと考える。現金封筒の廃止は現段階で考えていないが、紙の厚さを変更するなど環境負荷削減に着手した。今後キャッシュレス化が進むのであれば現金封筒の廃止も視野に入れて検討したい」(興産信金)という機関もある。

また、「窓口での現金支払いも年々縮小しており、封筒の需要も年々減少している。各営業店は必要最低限での発注を行い、封筒の在庫削減に挑んでおり、今後も削減に取り組む方針」(ハナ信組)、「現金封筒に環境へ配慮した素材を採用するなどして、SDGsの達成に向け取り組む」(西武信金)との回答もあった。さらに経費削減策の一環として「提携金庫と共同で封筒を調製している」(足立成和信金)との回答もあり、共同仕入れでコストを削減する動きも見られた。

経費がかかるにしても顧客の底堅い需要に対応するために現金封筒を発行し続ける信金・信組。今後、預金者のマインドが変わってくればSDGsの観点から環境に配慮した封筒や、一部の地方銀行で出ている封筒廃止の動きが地域金融機関でも出てくる可能性がある。

アンケートに協力を得た信用金庫、信用組合(順不同、匿名希望の5信金4信組を除く)は次の通り。
▽朝日信金▽興産信金▽さわやか信金▽東京シティ信金▽東京東信金▽足立成和信金▽西武信金▽城南信金▽昭和信金▽目黒信金▽滝野川信金▽東京厚生信組▽中ノ郷信組▽第一勧業信組▽ハナ信組
日刊工業新聞2023年1月10日

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