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どうなる変速機需要。トヨタ北海道がCVT生産ライン新設

ジヤトコ社長「(2020年にAT世界トップへ)海外の生産を増強する」
どうなる変速機需要。トヨタ北海道がCVT生産ライン新設

トヨタ自動車北海道第4工場内CVT生産ライン

 トヨタ自動車北海道(北海道苫小牧市、田中義克社長、0144・57・2121)は、無段変速機(CVT)の生産ラインを新設、2月中旬に稼働させる。同社のCVT製造ラインはこれで3本目。投資額は100億円程度とみられ、残業を含まない定時での生産能力は月2万台を見込む。新設するラインは主に東南アジア諸国連合(ASEAN)のトヨタ完成車工場向けを想定する。

 トヨタ自動車北海道は2006年9月にカローラ向けCVT用の生産ラインを稼働し、13年6月に第2ラインを設けた。第1ラインの生産能力は月2万6000台、第2ラインは月2万台。製品は主に北米の完成車工場向けに出荷しており、15年は年間約63万台を生産した。

 自動車のモデルチェンジに合わせ、駆動ユニットも自動変速機(AT)からCVTに移行し、世界的にCVT需要が増えている。これに対し、既存ラインはフル稼働状態が続く。CVT用金属ベルトを製造するシーヴイテック北海道(北海道苫小牧市)がトヨタ自動車北海道の工場内で14年1月に操業をはじめ、ベルトを安定調達する体制を整ったことから、ライン増設を決めた。

 北米向けCVTの部品については、北海道内からが約30%、東北からが約15%と北海道・東北地区での調達率を増やしている。田中社長は「さらに増やす方向に持っていきたい」と話す。

 トヨタ自動車北海道は92年に生産を開始。AT、CVT、トランスファーなど駆動ユニットを生産しており、15年3月期の売上高は前期比3%増の1776億円。

ジヤトコ・中塚社長インタビュー


 ―無段変速機(CVT)を含む自動変速機(AT)の生産台数の見通しは。
 「2015年度はかなりの成長を見込んでいたが、14年度の520万台並みになりそうだ。米国は堅調に推移し、中国もまずまずの台数を確保した。一方で東南アジアが回復しなかった」

 ―16年度の課題は何ですか。
 「16年度はプラス成長を狙い、計画を詰めている。ただ生産能力は変わらない。例えば中国の工場では新しい変速機が立ち上がったばかり。海外工場で生産と品質を安定させ、きちっと提供していくことが重要だ」

 ―20年にATメーカーで世界ナンバーワンになる目標を掲げています。
 「目標とする20年に向けては、生産能力は足りなくなる。国内は維持しながら、成長の源泉である海外を増強する。中国第2工場建設や、メキシコ第2工場拡張は選択肢の一つ。従来の生産増強モデルではなく、もっと投資効率を高め、フレキシブルに生産調整もできる工場増強のあり方も考える」

 ―インダストリー4・0への取り組みは。
 「ドイツに学びにいったり、活用を検討したりしている。インターネットを使ったモノづくりはすでに程度の差はあれ、やっている。ただ、フィードバック技術を使ったやり方はまだ緒に就いたばかり。変速機に適した活用の仕方があるはずで、それを見極めている。変速機は複雑で非常に精密な部品。日本はまだまだ競争力はあるし、モノづくりの強みやマザー工場としての機能で、世界をリードする役割がある」

【記者の目・道を切り開く意気込み必要】
 ジヤトコは生産台数を順調に伸ばしてきたが、ここへきて伸びが鈍化。変速機を不要とする電気自動車(EV)の脅威も現実味を帯びる。現在の最優先課題は、AT・CVTの燃費向上などの競争力強化。新興国市場向け変速機や、電動車両に対応した小型・軽量のCVTにも力を入れる。販路開拓も合わせ自ら道を切り開く意気込みが必要だ。
(聞き手=静岡・伊奈淳一)
日刊工業新聞2016年2016年1月26日/2月3日自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
愛知製鋼の爆発事故の影響でトヨタは国内工場の稼働を8日から停止するが、トヨタ自動車北海道も対象に入っています。 燃費の改善に変速機は極めて重要で、EVが普及が進もうが、完成車メーカーと生産関連会社の関係は中期的にも変わらないだろう。

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