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戦後初の理系トップ、東京ガスの新社長ってどんな人?

戦後初の理系トップ、東京ガスの新社長ってどんな人?

グータッチする笹山次期社長㊧と内田社長

東京ガスは21日、2023年4月1日付で新社長に笹山晋一副社長(60)が昇格する人事を発表した。エネルギー業界は足元の燃料高騰や需給ひっ迫、長期的な脱炭素と課題が山積する。データ分析や、電力小売り事業の立ち上げ、エネルギー政策、経営ビジョンの策定など、ガス以外の多様な経験も持ち、戦後初の理系トップとして舵を取る。23年6月の株主総会後の取締役会で取締役に就任、内田高史社長(66)は同日、取締役会長に、広瀬道明会長(72)は相談役に就任する予定。

笹山氏は「大変革時代に変化に柔軟に対応できるポートフォリオ型経営が使命」とし、脱炭素ソリューションをガス、電力に次ぐ事業の柱に育てる考え。安全や安定供給を維持しつつ、デジタル化や脱炭素化を急ぐ。

東ガスは22年4月、ガス自由化の最終形となる導管部門の別会社化と同時に、ガス販売、燃料取引、ソリューション、海外事業などを疑似分社化したカンパニー制とした。自由化でガス・電力の販売競争が激化する中、各部門に明確な収益目標を持たせた。笹山氏は22年4月に副社長と初代の最高戦略責任者)(CSO)に就任し、グループの全体戦略を見てきた。

同社は21年に指名委員会等設置会社に移行した。東ガスの社長は4年交代が慣例で内田社長は22年4月に丸4年を迎えたが、委員会がコロナや国際情勢を鑑み21年秋に1年延長を進言。22年秋に委員会が社内の複数候補から笹山氏に絞り込み、21日の取締役会で決定した。結果として笹山氏は1年間、社長を補佐し全社を俯瞰(ふかん)する準備期間を得ての登板となる。

【略歴】笹山晋一氏 86年(昭61)東大工卒、同年東京ガス入社。16年執行役員、18年常務執行役員、20年専務執行役員、22年代表執行役副社長兼CSO。岡山県出身。

素顔/東京ガス社長に就任する笹山晋一(ささやま・しんいち)氏

「論語とそろばんのバランスが何より大切」。社長就任を前に東京ガス創設者の渋沢栄一の言葉をかみしめる。安定供給や安心という絶対的価値と、脱炭素に向けた新たな収益創出を心に刻む。

自称「なんちゃって理系」。就職時、銀行や商社を多く回り、たまたま話を聞いた東ガスに「好き放題やらせてもらえそう」と入社したとか。ガス会社の枠を超えた多くの経験や人脈が大競争、大変革時代のトップに結びついた。好きな言葉は自分を知り、歴史に学び、厳しい意見を聞くという「三鏡」。塩野七生の「ローマ人の物語」を愛読し、趣味の旅行では全都道府県を2回以上制覇した。

一方、白羽の矢を立てた内田高史社長は「トップの必要条件はIQ(能力)、十分条件は愛嬌」が持論。度量の広い戦略家で信頼感も厚い笹山氏の魅力を「人が大勢寄ってくる。愛嬌(あいきょう)たっぷりで“いじりがい”がある」と評する。(編集委員・板崎英士)

日刊工業新聞 2022年12月22日

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