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液晶調光フィルムで困難な「黒色」に成功、凸版印刷が量産へ

液晶調光フィルムで困難な「黒色」に成功、凸版印刷が量産へ

「LC MAGIC」新グレード「ノーマルブラック」の使用イメージ。電源オン時(左)、電源をオフにすると95%の可視光線を遮る(右)

凸版印刷は電源のオン/オフで透明と不透明を切り替えられる液晶調光フィルムで黒色を出すことに成功した。電源オフ時に可視光線の透過率5%を実現。プライバシー性が求められる自動車のリアサイドガラスや頭上からの光を遮るためにサンルーフなどの採用を見込む。2024年度から滋賀工場(滋賀県東近江市)での量産を開始。25年度までに液晶調光フィルム事業全体で約30億円の売り上げを目指す。

液晶調光フィルム「LC MAGIC(エルシーマジック)」の新グレード「ノーマルブラック」として提案する。従来、凸版を含め、白色の調光フィルムの提供はあったが、高級感のある内装に合った黒色は技術的に製品化が困難とされていた。

電源オフ時は調光フィルム内の液晶が不均衡に配向されている状態のため、光が散乱し不透明になる。層の構造内に色素をランダムに配置させることで、オフ時には可視光線の透過率を5%まで抑えることができる。

通電時には色素があらかじめ設定された向きに整列するため、可視光線を最大43%通す。この透過率は市販車の標準仕様のリアガラスと同等。黒色のフィルムを採用した製品などと比べ、透明・不透明時のコントラストを強めることができた。

独自の紫外線(UV)カット層が色素の退色を防止するほか、従来のLC MAGICと同様に、はさみなどで自由な形状にカットすることも可能だ。

自動運転の実現に向けた電気自動車(EV)への移行と同時に、車内での過ごし方も変化すると予想される中、車両重量の増加を抑えながらもプライバシー性を高める装備が求められている。

日刊工業新聞 2022年12月19日

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