名古屋のハウスメーカー「寝耳に水」の破綻劇、引き金になった1通の文書
東海地区では中堅上位クラスのハウスメーカーであった考建が、6月30日に破産開始決定を受けた。リーマン・ショック以降の景気冷え込みなどで住宅需要は減少傾向を辿るなか、比較的持ち家志向の高い東海地区を地盤として事業を拡大。業績は堅調に推移していて、はた目には順調に見えていたなかでの急転直下に、驚きの声は多く聞かれた。
躓きの予兆がまったくなかったわけではない。金融機関からの借入は相応に嵩んでいて、財務内容については改善の余地ありという状態のなか、取引先の倒産で多額の焦げ付きが発生したことで資金繰りは悪化していた。
破綻に至った直接的な引き金となったのは、2022年初めに出された「支払い延期のお願い」というレターだ。取引先に対して送られたこの1通の文書が一気に当社に対する信用不安を高めてしまった。帝国データバンクへの問い合わせも殺到し、一時はスポンサー探しに動いていたとの情報もあったが、立て直すことは叶わなかった。
こうした情勢の急変に、驚いていたのが取引金融機関だ。返済猶予などの事前の相談は言わずもがな、月々の返済も約定通り行われていたとのことで「率直に言って寝耳に水という状態」(銀行融資担当)だったという。「一般論だが、約定通りに弁済が進んでいた融資先なら、リスケ要請があれば応じられたかもしれない」(別の銀行審査担当)というように、一般取引先に支払いができなくなるほどキャッシュが枯渇する前に金融機関に相談していれば、生きながらえ立て直すチャンスもあったかもしれない。
また、当社の破産申立書に債権者として記載があった金融機関は18行と、当社の業容からすると多過ぎる印象で、いざというときに頼れるメーンバンクの存在が希薄だった可能性は否定しきれない。多行取引には要注意、の典型例とも言えそうだ。(帝国データバンク情報部)