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なぜ鴻海に?「経済合理性を詳細に検討された結果」(主力行幹部)

シャープ高橋社長「BツーBでシナジーがだせる」
なぜ鴻海に?「経済合理性を詳細に検討された結果」(主力行幹部)

会見後、記者に取り囲まれる高橋社長

 電子機器製造受託サービス(EMS)世界最大手の台湾・鴻海精密工業と政府系ファンド・産業革新機構によるシャープ争奪戦は、1月下旬の終盤戦に入ってからの鴻海の巻き返しが奉功した。

 シャープの主力取引銀行幹部は「経済合理性を詳細に検討された結果が今日の結論。銀行として良い提案に賛同するというスタンスは変わっていない」とした。シャープの主力取引銀行はみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の2行。このうち1行はかなり鴻海案に傾いているという。さらに複数の社外取締役が、鴻海案による再建を支持したもようだ。

 鴻海がシャープの液晶事業の獲得に執念を燃やすのは、「米アップルからスマートフォン向けディスプレー再受注が固まりつつあり、これを確実にしたいため」(関係者)とされる。

 シャープは老朽設備と生産工程の問題で米アップルなどからの受注取りこぼしが目立つが、それでも鴻海グループの液晶事業に比べて、一日の長がある。小型高精細パネルは一定の評価を得ており、次期アイフォーンで見込まれる小型4インチサイズはシャープが受注したようだ。

有機ELと「IGZO」に親和性


 加えて、米アップルが18年の新型スマホで採用を検討する有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレー開発でも両社は協力できそうだ。液晶技術で業界をけん引してきたシャープだが、資金不足で有機ELディスプレーの開発は遅れている。

 鴻海はもともと巨額資金を有機EL開発に投じる方針を打ち出している。シャープ独自のIGZO(酸化物半導体)液晶は有機ELと親和性がある。高橋社長は「鴻海グループの液晶事業とも協業していける。EMSとしても鴻海は非常に強い」とした。

 鴻海案では白物家電や複写機、電子部品などの液晶以外の事業も売却せずに、世界最強のEMSとして部品調達能力や生産能力の高い鴻海と協業することで立て直しを図る。

 高橋社長は「BツーCより、BツーBでシナジーがだせる」と強調。「特徴デバイスを開発し、その部品をもとに特徴商品を生み出すスパイラル戦略はシャープの原動力だ」と液晶以外の事業の解体に対する拒否感と、一体運営に対するこだわりを強調した。
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日刊工業新聞2016年2月5日「深層断面」から一部抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
4日の記者会見はメディア側から鴻海に関しての質問が多かったこともあるが、高橋社長の回答時間も4分の3近くが鴻海のことに割かれた。会見に出た人間であれば「鴻海で決まり」と思えるものだった。ただ文中にあるように主力2行の中でも意見が分かれていたのも確かである。

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