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鴻海との交渉を始めた人、嫌がった人、停滞させた人、再開する人。そしてまとめる人

シャープ支援、鴻海が買収し再建へ
鴻海との交渉を始めた人、嫌がった人、停滞させた人、再開する人。そしてまとめる人

左上が町田氏、右上は高橋氏。下段は左から片山氏、奥田氏

 どうやらシャープは台湾・鴻海精密工業の傘下で経営再建を進めることになりそうだ。鴻海と官民ファンドの産業革新機構がそれぞれシャープに支援策を提示。この3カ月ほどはさまざまな報道が飛び交い、「日の丸連合」で事実上決まりと見られていた。

 4日午後の会見で、シャープの高橋興三社長は「2者の提案を公平・透明に精緻に提案を吟味して1カ月以内に決めたい」と明言を避けたが、「鴻海との交渉に社内外の(人材や情報などの)リソースをかけている」と話し、さらに「鴻海とは3年間(液晶合弁会社の)SDPを一緒にやってきた信頼関係が醸成されている」と、鴻海有利を事実上認めた。

 最初にシャープの経営危機が表面化した2012年。鴻海のトップ、郭台銘(テリー・ゴウ)会長と接触したのが町田勝彦元社長だった。しかし町田氏の後任である片山幹雄元社長は、液晶事業出身で鴻海との提携に乗り気でなかった。町田氏、片山氏の路線対立から棚ぼたで社長になった奥田隆司氏は、4年前の交渉の渦中にいたが、決定権はほとんど持っていなかった。現在の高橋興三社長を含め、危機後は実質的な銀行管理下で、「経営不在」による時間というコストだけが積み上がってしまった。

 鴻海のテリー・ゴウ会長はことあるごとに提携へのラブコールを送ってきたが、12年の秋以降、真剣な交渉は行われてこなかった。しかしシャープの経営環境が一段と悪化した昨年8月から交渉が再開された。

 4年前、テリー・ゴウ会長のシャープへの接近は、巨大化する韓国サムスン電子への対抗が最大の理由だったが、今、エレクトロニクス業界を取り巻く状況は大きく変わってきている。

 鴻海との提携交渉が進むことに対し、高橋社長ら現経営陣の英断という声も一部にあるが、歴代の4人の社長は「今の会社の形」を延命させることがすべてで、将来を見据えた経営再建に取り組んでこなかった。

 昨年5月の中期経営計画の発表時に、液晶事業の分社や外部資本の受け入れを明確に否定していた高橋社長。4日の会見で決断できない経営を問われ、「反論はしない」と自らの責任を認めつつ、どちらの支援案に決まっても、「あとは勝手にやって下さいとはいえない」とし、引き続き社長として再建に携わりたい意向を表明した。

 今回、鴻海案に傾いたのは必ずしも高橋社長らシャープ幹部の決断ではない。テリー・ゴウ会長のアグレッシブな行動と、債権放棄に否定的だった主力行、世論を気にする安倍政権の意向など複合的な要因が重なってのものだ。
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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
個人的には鴻海での再建を見たかった自分としては、良い選択だと思う。経産省の産業政策の行き詰まりも感じる。

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