AI実用化が本格化、変わる医療機器市場の将来像
医療の効率化を実現する技術として、人工知能(AI)の実用化が本格化する。医用画像の高品質化や診断支援など、AI活用の目的や用途が広がる。背景には医療現場の深刻な人手不足があり、少子高齢化が進む日本では今後もAI活用ニーズは拡大していくとみられる。大手医療機器メーカーに加えソフトウエア開発が得意なベンチャーが台頭しており、医療機器市場で活躍するプレーヤーが増えそうだ。
富士フイルムはAIを活用した内視鏡診断支援システム「キャドアイ」から、日本で初となる胃・食道領域の内視鏡診断支援ソフトウエア「EW10―EG01」を11月に発売した。内視鏡専門医と同等の精度でがんが疑われる部位をリアルタイムに検出が可能で、医療の効率化、高品質化への貢献が期待される。
AIを活用した診断支援の開発は、大手医療機器メーカーを中心に進んできた。2019年にオリンパスが日本初となる大腸内視鏡診断支援ソフトウエア「エンドブレイン」を発売。富士フイルムも20年に大腸ポリープの検出と鑑別をするソフトウエア「EW10―EC02」を発売しており、EW10―EG01の展開で商品ラインアップを拡大した格好だ。
こうした中、ベンチャー参入の動きも見られる。AIメディカルサービス(東京都豊島区、多田智裕最高経営責任者〈CEO〉)が胃がん鑑別AIの承認申請を提出し、実用化を目指している。
医療AIの世界市場は現在の1兆1000億円程度から30年までに25兆円にまで成長すると予想される。多田社長は「大手医療機器メーカー相手に競争し、市場を取り合う段階ではない。製品を実用化し市場の成長に向け協力していくことが重要だ」と話す。
AIによる診断支援システムのニーズが拡大したことで、大手医療機器メーカーから検査装置のようなハードを持たないベンチャーまでプレーヤーが広がった。それぞれの強みを生かした製品の開発が進むことで、市場は盛り上がりそうだ。