園児の送迎バス置き去りを防げ、実用化目指すAIシステムの仕組み
セイビー(東京都港区、佐川悠最高経営責任者〈CEO〉)とインテリジェンスデザイン(同渋谷区、中沢拓二社長)は、幼稚園送迎バスで園児の置き去りを防止する装置の実証実験を10月から行っている。バスに人工知能(AI)搭載カメラを設置し、車内に取り残された園児を検知し職員にアラートを送信。精度の検証や利用シーンに合わせた最適化などを行い、2023年春をめどに実用化を目指す。
9月、静岡県の認定こども園で3歳の女児が通園バスの車内に取り残され熱中症で死亡する事故が発生。政府は相次ぐ子どもの置き去り事故を受け、23年4月から全ての通園バスに置き去りを防止する安全装置の設置を義務化する方針だ。
神奈川県厚木市の幼稚園からバスへのドライブレコーダー設置の相談があったことをきっかけに、セイビーが実証の話を持ちかけた。同事業を担当するセイビーの尾崎巨典執行役員は「当社には小さい子どもがいる社員も多く、事故に対する思いが強かった。幼稚園側も安全対策の意識が高く快諾いただいた」と背景を話す。
実証ではバス車内の後部にAI搭載カメラを設置。降車後に座席の下などに隠れていた園児が出てくる場面などを想定した。置き去り防止に関しては車内最後部のスイッチを押すまでブザーが鳴り目視確認を促す方式や人感センサーで感知する方式など、さまざまな装置の製品化が活発化している。
インテリジェンスデザインは「AIを中心とした先端技術を社会実装する」をテーマに人数計測や交通量計測、性別・年代推定などが可能なAIのソリューションを提供。これまで東京都渋谷区のコミュニティーバスで乗降者分析の実証などを実施してきた。同社のAIとカメラを用いた置き去り防止への取り組みでは、子どもに特化した認識精度の向上など学習の強みを生かす。また特定の時間帯や場所で自動でカメラのオン・オフを切り替えるなど「応用性が高い点もメリット」(尾崎執行役員)。
セイビーはサービス開始後、バスへの装置取り付けを担う。同社は自動車の出張整備・修理が専門で、全国に約400人の整備士が登録している。整備工場などにバスを預けることなく指定した場所や時間で取り付けが可能なため、バスの運行を止めず幼稚園側の負担なく対応できるという。また、インテリジェンスデザインと開発している装置のほか、顧客の要望に応じて幅広い安全装置の取り付けに対応する方針だ。(増田晴香)