日産の構造改革の成果占う、新型「セレナ」が搭載した最先端の技術たち
日産自動車は28日、ミニバン「セレナ」を約6年ぶりに全面改良し、ガソリン車を今冬、ハイブリッド車(HV)を2023年春に発売すると発表した。HVには新型エンジンやハンドルから手を放した状態で運転できる支援機能を搭載。すべての乗員が快適さを感じる走りを追求した。主力車種の売れ行きは、先進技術を投入して国内市場に再び力を入れる構造改革の成果も占うことになる。(西沢亮)
「家族のための最先端の技術を搭載して進化を遂げている」。日産の星野朝子副社長はファミリー層が中心のミニバン市場に投入する新型車の仕上がりにこう自信を示した。
新型セレナではエンジンを発電のみに使いモーターで駆動する独自のHV技術「eパワー」を搭載。発電専用として初めて排気量1400ccのエンジンを開発して採用した。ガソリン車で必要なスターターモーターといったエンジン部品を省き、剛性を高める構造を採用するなどしてエンジンの作動音を抑え、静粛性を高めた。
現行車と比べエンジン出力を16%、モーター出力を20%向上して十分な駆動力を確保し、アクセル操作に応じた滑らかな加減速を実現。車酔いにつながる頭の揺れを減らし、乗員が快適に感じる乗り心地につなげた。
高速道路の同一車線内でハンドルから手を放して運転できる独自の支援技術「プロパイロット2・0」をミニバンに初めて搭載。背の高いミニバンでの自動走行では急な割り込みや突風などの影響を受けやすかったが、同技術を初搭載した高級車「スカイライン」並みの運動性能を実現することで課題を克服した。日産の黒田和宏車両開発主管は「静かで滑らかに走るセレナとプロパイロットの相性は抜群」とし、長距離運転の負担軽減にも自信をのぞかせた。
消費税込みの価格は276万8700―479万8200円。販売目標は非公表。最上級グレードにのみプロパイロット2・0を標準装備した。
日産は20年に、24年3月期までの中期経営計画を策定。国内を重点市場と位置付け、電動化と自動運転技術を軸に商品力を高め、販売回復を目指す構造改革に乗り出した。
同社の国内販売は18年に60万台を超えていたが、半導体不足の影響もあり21年は約45万台と低迷が続く。国内販売の1割以上を占める主力のセレナも同様に下降し、21年は6万台弱にとどまった。再建から成長へと経営を次の段階に押し上げる上でも、先進技術を搭載した新型セレナの躍進が試金石となる。
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