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コロナ禍で打撃の名古屋鉄道が「不動産事業」推進で狙うポジション

名古屋鉄道は、不動産事業を交通事業に次ぐ第2の収益源に育てる。コロナ禍で落ち込んだ鉄道利用は従前に戻らないと判断。市街地を活性化し、駅とその周辺を鉄道利用だけではない“目的地化”する都市開発方針を進める。4月に本社部門と子会社を統合した名鉄都市開発(名古屋市中村区)を起爆剤に「乗数的な事業成長を目指す」(同社の高見茂宏執行役員)構えだ。

「情報の一元化と一貫した運営体制を進め、中部圏のまちづくり事業者としての期待に応える」。3月末、名鉄の高崎裕樹社長は名鉄都市開発の設立会見で力強く語った。主力の鉄道事業で大きな成長を期待できない名鉄にとって成長ドライバーとなる不動産事業の強化は不可欠だった。

2022年3月期のセグメント別営業損益は、交通事業が約49億円の損失に対し不動産事業は110億円の利益。コロナ禍でも安定した成長が見込める上、「名鉄グループ全体の収益力のベースアップにつながる」(高見執行役員)。これが事業強化に走る背景だ。

事業部門や分譲マンションを手がける不動産子会社を統合した名鉄都市開発。分散していた仕入れや開発、管理などを整理し「事業をトータルに推進できる体制を構築する」(同)狙いだ。

統合から半年が経過し、効果は現れている。不動産仕入れの意思決定が迅速化され「従来取得できない大規模案件に取り組める」(同)。ビルの警備や清掃といった運営管理機能を一体的に営業できるようになり、個々のサービスで受注した状態から「ビルメンテナンスをトータルで受注できるようになった」(同)。

リニア中央新幹線を機に再開発が活発化する中部圏だが、地元資本の不動産デベロッパーの存在感は薄い。これまでマンション開発が主力だった名鉄は、まちづくりに業態を広げ、このポジションを狙う。事業の要となる人材確保を強化し、駅を中心にした市街地一帯の開発を進める。

日刊工業新聞 2022年10月13日

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