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“小さいトヨタ”へ布石。1000万台体制でスピード感を出せるか

ダイハツに開発・生産を委託、車体メーカーと連携深める
“小さいトヨタ”へ布石。1000万台体制でスピード感を出せるか

組織改革で車体メーカーとの連携を強化する(トヨタ自動車東日本宮城大衡工場)

 トヨタ自動車が8月にダイハツ工業を完全子会社化する。トヨタ、ダイハツ両ブランドの小型車事業と新興国事業は今後、ダイハツが主体となって進めることになる。トヨタは完全子会社のトヨタ車体やトヨタ自動車東日本(TMEJ)との間でも各社の得意な事業領域を任せ役割分担を明確化する。グループと一体となり年間販売1000万台を超えた中でも持続的成長が可能な体制を模索する。

 「トヨタはミドルクラス以上のクルマづくりは得意だが、小型車においてはそこまで存在感を示せていない」。1月29日、東京で開いた両社による共同会見。豊田章男トヨタ社長は率直に課題を語った。

 その小型車事業は特に新興国戦略に欠かせない。事実、トヨタは新興国市場で攻めあぐね、戦略の再構築に迫られていた。そこで軽自動車を中心に低コストな小型車づくりが得意なダイハツに開発から調達、生産の事業主体を任せることにした。

 すべてを自社でまかなおうとする自前主義へのこだわりが根強いというトヨタ。今回の判断の背景には「こだわりにとらわれていたらグローバル競争を勝ち抜いていけない」(豊田社長)との強い危機感がある。

 「(年間販売)600万台を超えたらマネジメントや仕事の仕方を変えないといけない。トヨタは従来の体制のまま無理して拡大したからおかしくなった」。トヨタ首脳はリーマン・ショックや大規模リコール問題で経営危機にひんした反省から、こう強調する。

 グループとの体制見直しはすでに始まっている。12年にはトヨタ車体を完全子会社化し旧関東自動車工業など東北3社を統合しTMEJを発足させた。

 トヨタ車体はミニバンやスポーツ多目的車(SUV)など、TMEJは小型車といったように各車体メーカーの役割を明確にした。完全子会社化でトヨタと戦略を合わせ、事業運営はより小回りのきく専門集団がスピード感をもって進める。

 トヨタ本体の自動車事業も再編する。先進国や新興国といった地域別から小型車など商品タイプ別に分ける組織改革を4月に実施する。より”小さいトヨタ“で事業を回しスピードを上げる。各組織別に車体メーカーとの連携もより密にする。

 世界のどのメーカーでも経験したことがない、年間販売1000万台を超えた水準での持続的成長を目指すトヨタ。グループを含めその姿を大きく変えようとしている。
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日刊工業新聞2016年2月1日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
日産の日産車体、ホンダの八千代工業との関係にも注目。トヨタでいえば「ダイハツブランド」を残すことはなかなか興味深い材料になる。業界は違うが、パナソニックが三洋電機を買収した時に、「ONE Panasonic」の御旗のもと「SANYO」を無くしたことに今でも懐疑的な見方は社内外にある。

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