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聴覚・視覚障がい者別に特化して受け入れる国立大学、在職者向けにリカレント教育

筑波技術大学は聴覚・視覚障がいを持つ在職者向けリカレント教育を始めた。同大は障がい学生向け情報系教育に強く、ネットワークセキュリティーなどデジタル変革(DX)の科目がなじむ。職場環境整備に向けたコミュニケーションやチーム協働などのスキルも重視し、演習を多く配置した。障がい者のキャリアアップと共生社会実現を後押しする取り組みとして注目される。

筑波技術大学は学部生を聴覚・視覚障がい者別に特化して受け入れる国立大学だ。事業所における障がい者の法定雇用率引き上げやダイバーシティー経営を背景に、全国で働く両障がい者・関係者向けの講座を整えた。

視覚障がい者の場合は鍼灸や理学療法の専門社会人が多い。そのため治療院や通所介護経営などの開業入門科目を置いた。最新の障がい者向けパソコン支援ツールを活用した演習など、キャリアを広げる学びを用意した。

受講者数は各20人、部分受講50人など。土日などのオンライン受講だが録画配信で、後日の参加も可能。受講料は無料。履修証明書の仕組みもある。同大教員の他に東京聴覚障害者支援事業所の専門家も参加。キャリアコンサルタントによる相談もある。

職場の障がい者は少数派で、同大が持つような資源や情報に欠けることが多い。健常者とのコミュニケーションも通常とは異なるノウハウが必要だ。一方でオンラインツールの普及などで、職場全体の働き方改革と相乗効果が出せる例も出ている。新講座は障がい者の高度人材育成を手がける同大を、全国で活用してもらうきっかけになりそうだ。

日刊工業新聞 2022年10月20日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
筑波技大ほど特色・個性ある大学はそうはない。なにしろ聴覚か視覚に障害がある学生しか学部に入学できない。「手に職」の意識が強いことから、近年の情報系教育をはじめ教員も学生も真剣で、卒業生の採用も密かに人気が高い。背景には法定雇用率引き上げがあり、企業就職が増えているわけだが、社会人になってから健常者とのギャップで悩むケースも多いと聞く。同大が用意するリカレント教育を通じ、学びの内容に加えて、同様の働く障がい者同士のネットワークが、受講生にとって貴重なものになるのではないか、と思っている。

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