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自動車業界の変革に対応、横浜ゴムが加速する事業再編の行方

横浜ゴムは2023年12月期を最終年度とする中期経営計画において、事業再編を加速している。背景にあるのがCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(乗り物のサービス化)に代表される自動車業界の変化だ。

同社売上高の7割はタイヤ事業が占める。タイヤには乗用車向けの「消費財」と、トラックやバス向けの「生産財」がある。市場規模の比率はほぼ半々であるのに対し、横浜ゴムの販売比率は消費財に偏っている点が課題だと認識。今後「個人所有の車が減少し、人や物の移動を支えるインフラ車両の増加が予想される」(山石昌孝社長)と見て、生産財事業のテコ入れを図っている。

特に成長ドライバーに位置付けるのが、安定的に高い収益を見込める鉱山・建設車両や農業機械向けのオフハイウェイタイヤ(OHT)だ。OHTを手がける蘭アライアンスタイヤグループ(ATG)を16年、愛知タイヤ工業(愛知県小牧市)を17年に買収。21年には横浜ゴム、ATG、愛知タイヤの事業統合を始めた。

22年3月には農業機械用や産業車両用タイヤを製造販売する、スウェーデンのトレルボルグ・ホイール・システム・ホールディングの買収を決めた。「生産財の全体構成を適正化し、ラインアップやサービス、デジタル変革(DX)を強化できる」(同)と意気込む。

21年には東京都港区の本社ビルや、「ハマタイト」ブランドで展開していた接着剤などの事業を売却するなどしてキャッシュを創出。M&A(合併・買収)などに充てている。

消費財分野においても高付加価値商品の比率向上を掲げ、レースなどのカート用タイヤ事業から22年末で撤退するなど事業ポートフォリオの見直しを進める。「既存事業の深化と市場変化の取り込みを同時に推進」(同)し、23年12月期には過去最高となる売上高1兆円(22年12月期見込みは8550億円)を達成したい考えだ。

日刊工業新聞 2022年10月06日

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