トヨタとEV共同開発したスバル、開発責任者が感じた考え方の違い
SUBARU(スバル)は、資本業務提携を結ぶトヨタ自動車と共同でスポーツ多目的車(SUV)タイプの電気自動車(EV)「SOLTERRA(ソルテラ)」を開発した。互いに異なる意見をぶつけ合う「仲良くけんかできる関係」を構築し、両社の技術を生かした車両を作り上げた。開発責任者である商品企画本部の小野大輔プロジェクトゼネラルマネージャーに前線での体験を聞いた。
―製品開発で感じた考え方の違いは。
「特に感じたのは三河商人としての血だ。トヨタの開発者からは『この部品はいったいいくらだ』『これをやるといくら利益がでるんだ』といった発言が最初に出てきた。当然、当社もそうした点を考えていないわけではないが『良いモノを自動車に搭載したい』という思いが最も強い。営利企業なのでまずはトヨタのように考えないといけないと気付かされ、良い刺激になった」
―EVの開発、生産で大変だった点は。
「互いにこれまでと違う開発手法で短期開発に取り組んだ。一緒に全く新しいモノを作った感じだ。後発の開発部隊からは内容を聞かせてほしいと言われている。生産で最も大変だったのは、電池パックを作る工程とそれを車体の下から組み付ける工程だ。1日に何百台も生産するため、安全性と効率性を両立する作業工程にしないといけなかった」
―5月に受注を開始して一度リコールで停止しましたが、10月に再開しました。出だしは好調でした。 「環境に対する消費者の意識が急激に変化しているときに、EVを投入できたのが良かった。ただ、航続距離の短さ、充電スタンドの待ち時間など、まだEVに対する不安感を持つ人は多いように感じている」(石川雅基)
【チェックポイント/電動化競争、連携で勝つ】
スバルは19年、電動化時代を見据えてトヨタと資本業務提携を結び、連携を強化。トヨタからの出資比率を20%に引き上げ、スバルから0・3%を出資する相互出資に踏み込んだ。連携を深めることで協調領域を拡大し、EVの開発、生産の効率性を高めた。スバルはEVでもスバルらしい走行性能を実現できたと力を込める。研究開発費が競合他社に比べて劣るスバルが電動化時代を勝ち抜くには、引き続きトヨタとの連携がカギを握りそうだ。
【関連記事】 スバルが新しいクルマ作りで必ず頼りにする機械メーカー