野菜の重量4割増、植物の成長促す透明フィルムがスゴい
北大が開発、塗布で「紫外線→赤外光」波長変換
北海道大学の長谷川靖哉教授と庄司淳特任助教らは、植物の成長を促進する光波長変換透明フィルムを開発した。塗布だけで容易に作れる。電力などを使わず、太陽光中の紫外線を赤色光へ効率的に変換する。野菜と樹木で実証し、1・2―1・4倍の苗高や重量が得られた。大規模なビニールハウスなどに適用でき、農業の生産性向上につながる。
植物の光合成には葉緑素中のクロロフィルが吸収する赤色光が効果的とされる。一方、紫外線は多くの生物にとってダメージにつながり、太陽光の紫外線を赤色光に変換する技術の植物生産への応用が期待されている。
研究グループは、可視域に光吸収がなく紫外線だけを吸収するユーロピウム錯体と透明化剤を用い、光波長変換透明フィルムを開発した。混合溶液を市販の農業フィルムに塗布するだけで容易にフィルム化できる。
この透明フィルムは太陽光の紫外線を赤色光に変換し、紫外線照射下では赤色に強く発光する。また、発光するイオン種を設計することで、植物の種類に合わせて緑や黄色の光にも変えられる。
野菜のスイスチャードと樹木のカラマツの育成に適用した結果、日照時間の短い冬季の成長に有意差が見られた。育成60日後のスイスチャードは1・2倍の草高、1・4倍の重量となった。カラマツも1・2倍の苗高、1・4倍の重量となり、育苗期間の1年短縮に相当する成長促進効果が得られた。
日刊工業新聞 2022年10月27日