財界きっての論客が語る企業再編の哲学。「競争と協調」で試練を超えて行け
三村明夫・日本商工会議所会頭 新日鉄と住金の合併が生んだ企業価値
日本企業の主戦場が国内から海外に移り変わる半面、なかなか進まないのが企業再編だ。海外では化学大手のデュポンとダウ・ケミカルが合併で合意するなど、大型再編は世界の潮流となっている。健全な企業同士が再編・統合し、国際競争力を高めることに日本企業はもっと目配せする必要がある。あるべき再編の姿を示したい。
日本企業の収益性の低さが指摘されて久しい。ROS(売上高経常利益率)が総じて低く、ROE(株主資本利益率)の低調の要因になっている。原因のひとつは国内市場の伸びが見込めない中で、多くの産業ではプレーヤーが多すぎ、過当競争を繰り返していること。これでは国内の安定的な収益基盤は整備できない。
企業の収益性や生産性を高めるには何が必要か。企業再編がひとつの有力な選択肢になる。わが国では収益性が悪化した企業の救済合併は少なくないが、グローバルで戦うためには、健全な企業もしくは事業部門同士が統合し、規模のメリットを追求することが不可欠。前向きな再編が日本では少なすぎるというのが実感だ。
わたしはかつて、新日鉄会長として住友金属工業との合併を経験した。合併には数多くの試練がある。しかし、それを乗り越えれば効率的な経営が実現し、さらなる競争力を秘めた企業に成長する。
実際新日鉄―住金の場合、10社以上の関連会社の合併や人材の効率的な活用などにより、シナジー効果は2000億円に達している。市場もこれを評価、時価総額は世界の鉄鋼業の1位になるなど、再編が企業価値を向上させた好例と言えよう。
再編・統合に限らず、日本企業は幅広く連携することが望まれる。日本では個別メーカーの系列内での連携は活発ながら、系列を超えた協調はなかなか実現していない。自社開発技術へのこだわりやシェア意識の高さ、そしてコーポレート会社のトップとカンパニー会社との意思疎通が十分に図られていないことなどが要因だが、わたしは同業他社とのあるべき関係は競争と協調だと考えている。
営業面では徹底的な競争を繰り広げるのは当然だ。しかし、研究開発や海外投資、原料調達などでは協力することで得られるメリットは大きい。ライバルでありながらも、連携すべきは連携する―。「競争と協調」が日本企業の成長に向けた要諦である。
※日刊工業新聞で1月26ー29日に連載「広角 三村明夫氏編」を掲載しました。
日本企業の収益性の低さが指摘されて久しい。ROS(売上高経常利益率)が総じて低く、ROE(株主資本利益率)の低調の要因になっている。原因のひとつは国内市場の伸びが見込めない中で、多くの産業ではプレーヤーが多すぎ、過当競争を繰り返していること。これでは国内の安定的な収益基盤は整備できない。
企業の収益性や生産性を高めるには何が必要か。企業再編がひとつの有力な選択肢になる。わが国では収益性が悪化した企業の救済合併は少なくないが、グローバルで戦うためには、健全な企業もしくは事業部門同士が統合し、規模のメリットを追求することが不可欠。前向きな再編が日本では少なすぎるというのが実感だ。
わたしはかつて、新日鉄会長として住友金属工業との合併を経験した。合併には数多くの試練がある。しかし、それを乗り越えれば効率的な経営が実現し、さらなる競争力を秘めた企業に成長する。
実際新日鉄―住金の場合、10社以上の関連会社の合併や人材の効率的な活用などにより、シナジー効果は2000億円に達している。市場もこれを評価、時価総額は世界の鉄鋼業の1位になるなど、再編が企業価値を向上させた好例と言えよう。
再編・統合に限らず、日本企業は幅広く連携することが望まれる。日本では個別メーカーの系列内での連携は活発ながら、系列を超えた協調はなかなか実現していない。自社開発技術へのこだわりやシェア意識の高さ、そしてコーポレート会社のトップとカンパニー会社との意思疎通が十分に図られていないことなどが要因だが、わたしは同業他社とのあるべき関係は競争と協調だと考えている。
営業面では徹底的な競争を繰り広げるのは当然だ。しかし、研究開発や海外投資、原料調達などでは協力することで得られるメリットは大きい。ライバルでありながらも、連携すべきは連携する―。「競争と協調」が日本企業の成長に向けた要諦である。
※日刊工業新聞で1月26ー29日に連載「広角 三村明夫氏編」を掲載しました。
日刊工業新聞2016年1月29日1面