メタノール船開発へ、常石造船社長が明かしたこと
常石造船(広島県福山市)の奥村幸生社長は17日、日刊工業新聞のインタビューに応じ、10月3日に子会社化した三井E&S造船(東京都中央区)との協力関係を深化し、メタノール燃料船の開発に乗り出す方針を明らかにした。人事交流などを通じて組織の一体化を推進。次世代燃料への対応により環境規制をクリアした船舶の開発を加速する。
奥村社長はメタノール燃料船について「引き合いをたくさんもらっている」と説明。「燃料タンクの塗装が特殊でエンジンの手直しも必要だが、アンモニア燃料ほど実用化のハードルは高くない」と述べ、近い将来の製品化を目指していることを明らかにした。
三井E&S造船とは、アンモニア燃料船において商船三井を含む3社共同で開発し、2026年頃の完成を目指している。LPG運搬船でも、貨物タンクの技術で三井E&S造船の協力を得て23年の第一番船完成に向け常石工場(広島県福山市)で建造が始まった。
奥村社長は「いろいろな燃料への対応を同時に進めており、三井さんと一緒でないとできない」と説明。三井E&S造船に派遣している取締役を子会社化に合わせて1人から2人に増員したほか、今後さらに人事交流を進めて組織の一体化を図るという。
環境規制対応について常石造船は、船舶の国際的な二酸化炭素排出量規制である「EEDI」で2025年以降の契約船に対し基準値比30%削減を求める「フェーズ3」への対応を主要船型で完了。
次世代規制の詳細は決まっていないが、最大50%減という長期目標が挙がっている。奥村社長は、基準値比35%削減までは「(重油を燃料とする)従来技術で必ずいこうと目標を立てている」と説明。それを上回るCO2削減技術については、三井E&S造船を巻き込んだ次世代燃料への対応が不可欠になるとの見方を示した。